「データドリブン信者」が陥る大きな落とし穴 ミス、改ざんは日常茶飯事。信用できぬ舞台裏

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ロゴフは国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストで、彼の助言は影響力があった。債務危機をテーマにしたラインハートとの共著『国家は破綻する――金融危機の800年』(日経BP)はベストセラーとなり、政策立案者の必読書となった。

科学的データの誤りは単純なミスが原因

科学的誤りの多くは、このような意図的ではない単純な失敗によるものだ。

科学は実験とデータによって予測を検証するプロセスであり、科学者は裏づけの乏しい主張に対して懐疑的であることで知られている。そのため、科学者が私たちと同じように予想の罠に陥るのは、「意外だ」と思うかもしれない。

誰もがそうであるように、科学者も自分の研究結果が予測に反する場合は2重、3重にチェックするが、予測と一致する場合にはそれほど注意を払わない傾向がある。

その結果、発表された科学文献に含まれる誤りは、研究者にとって好ましい方向にそれやすい。従って、ラインハートとロゴフの意見に反対する経済学者が彼らの誤りに気づいたのは不思議ではない。

ラインハートとロゴフが事前にこれらの懐疑派と協力していれば、間違いに気づいたかもしれない。少なくとも、それが発表されることは防げただろう。自分に懐疑的な批評家を自分の陣地に招き入れること(科学界では「敵対的なコラボレーション」と呼ばれるプロセス)は簡単ではないが、大きな利益をもたらす可能性がある。

2012年に発表されたある論文の中で、大手ビジネススクール4校の行動科学者からなるチームが、事実や情報をより正直に報告するように促す方法を検討した。チームはアメリカの保険会社と協力し、1万3000人以上の自動車保険契約者に、車の走行距離計の数値を申告するよう依頼した。

一般的に、走行距離が多いほど事故率は高くなるため、走行距離計の数値の高さと保険料の高さは比例する。そのため、ドライバーには、前回の申告からの走行距離を過少申告して不正行為をする動機があった。各ドライバーは、「私が提供する情報が真実であることを誓います」という声明の下に署名するよう求められた。

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