職場の不正「見て見ぬふり」はなぜ起きるのか 私的なものを経費申請、文具の持ち帰りなども
事務用品の棚からペンを持ち出すことと、家族旅行を事業経費として計上する行為では、明らかに不正の規模が違います。しかしすべての事例で、何が起きているのかを知っていながら、見て見ぬふりをすることを選んだ人たちがいたのです。
それは、経費の処理を担当した事務アシスタント、あるいはウサギの旅行領収書を見た選挙管理委員会の会計係、もしくは会社の税務申告書を検証した監査法人かもしれません。
しかし、私たちがその人の立場であれば、ほとんどの人が同じ選択をしたと思います。悪事を働いた人を非難すれば、特にその人物が権力のある立場に就いていたときに、仕事上、大きな影響を被る可能性があるからです。
業務成績が悪い従業員なら公然と非難?
悪事を無視して利益を得るのは個人だけではなく、雇用主も同じです。
特に高い地位に就いている人にその傾向が認められます。ベイラー大学のマシュー・クエイドとその研究グループは、全米のさまざまな職種の従業員とその上司300組以上のデータを収集しました。
上司は、従業員の非倫理的行動、例えば勤怠報告書や経費報告書の改ざん、機密情報の不正使用などと、業務全般の習熟度を評価しました。そして、従業員は職場でどの程度仲間外れにされていると感じているのかを評価する尺度に回答しました。
この研究における仲間外れとは「職場で他の人に無視された」「職場で他の人に、まるであなたがそこにいないかのように扱われた」などの記述を通じて評価されました。
その結果、非倫理的行動と仲間外れの関係は、従業員の生産性によって異なることが明らかになりました。
生産性が低い従業員では、非倫理的行動への関与は仲間外れにつながるものでした。ところが、上司から生産性が高いと評価された従業員では、非倫理的行為と仲間外れの間に関連は認められませんでした。
研究者は、従業員が組織にとって価値ある存在のときは問題にしない悪事も、業務成績が悪い従業員では公然と非難される可能性が高いことを指摘しています。言い換えれば、「高い業務遂行能力には非倫理的行動を相殺する働きがあるかもしれない」のです。
この知見は、21世紀フォックスが、2017年にフォックス・ニュースのトップクラスの司会者だったビル・オライリーとの契約を延長したこと、彼による複数のセクハラ被害の訴えを認識していたにもかかわらず、年間推定2500万ドルを彼に支払うことに合意した理由を説明するのに役立ちます。
オライリーは、最終的にフォックス・ニュースから解雇されましたが、それはセクハラに対するクレームと関連する和解が公になった後でした。おそらく、その時点で広告費の損失という金銭的な代償に耐えきれなくなったのだと思われます。
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