職場の不正「見て見ぬふり」はなぜ起きるのか 私的なものを経費申請、文具の持ち帰りなども
報復を受ける可能性が低い場合でも、人は、時として個人的な動機から悪事を見過ごすことがあります。
企業の不正行為では、他者の非倫理的行動を無視することで、その人は直接的な利益が得られる場合があります。
カート・アイヒェンワルドが著書『愚か者たちの陰謀(Conspiracy of fools : A true story)(未邦訳)』で明らかにしたように、エネルギー会社エンロン(訳注:巨額不正会計事件を起こして2001年に破綻)の経営者、弁護士、顧問などを含む多くのリーダーたちは、同社が高株価を維持するために何十億ドルもの負債を隠していたことに気づいていたにもかかわらず、その問題を明らかにしようとはしませんでした。
エンロンが財務諸表の定期的な監査を行うために雇っていた有名な会計事務所アーサー・アンダーセン(訳注:世界有数の会計事務所だったがエンロン事件がきっかけで2002年に解散)の複数の幹部たちは、損失を隠そうとする不正行為のことを認識していました。
沈黙することの仕事上のメリット
一人の人間がどこまで知っていたのかはその人物の立場によって異なりますが、彼らの多くは、見て見ぬふりをして金銭的な利益を得ていました。
その結果、エンロンの創業者のケネス・レイ、CEO(訳注:最高経営責任者)のジェフリー・スキリング、CFO(訳注:最高財務責任者)のアンドリュー・ファストウを含む16人が金融犯罪を認めて有罪、さらに5人が有罪となりました。
しかし、それ以上に多くの人たちが、何が起きているのかをある程度知っていながら、この事件を止めるために何もしなかったのです。
エンロンの破綻は大きな注目を集めましたが、何年も報道されなかったホワイトカラー犯罪(訳注:企業の経営陣・管理職など、高い政治的・経済的地位を有する人々によって行われる横領・背任などの犯罪のこと)はこれだけではありません。
2005年には、民間軍事会社タイコのCEOのデニス・コズロウスキーとCFOのマーク・スワーツが、会社から4億ドル以上を不正流用して有罪判決を受けました。
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