「大谷翔平」にたとえて日銀の政策変更を説明する 「日銀=大谷翔平の熱狂的ファン」でYCCを解説

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住宅ローン金利について心配する人も多いと思うが、アメリカのように5%に上がることはないだろう。

お金はただ移動しているだけで、増減しない

逆に、金利が上がれば、年金の運用利回りも高くなり、日本の未来が明るくなるという声もあるが、これはまったくの見当違いだ。

お金はただ移動しているだけ。金利が上がれば、年金基金の収入は増えるが、その高い金利を支払うのは国債を発行している財務省であり、国民から集めた税金だ。もらえる年金が増える分だけ、支払う税金が増えているに過ぎない。

小説『きみのお金は誰のため』では、経済全体におけるお金の流れについて、説明している。

以前の話を思い出して、優斗は後ろを振り向いた。ビリヤード台には、今も3つの玉が乗ったままだった。玉をどれだけ転がしても、玉の数が減ったり増えたりするはずはないのだ。
七海はまだ眉間にしわを寄せていた。
「お金の移動はわかります。ですけど、金利の分だけ、お金は増えるのではないでしょうか。日本は低金利ですが、預金していれば利息がつきますよね」
ボスは「いや」と一度首を横に振ってから説明を始めた。
「利息もまたお金の移動なんや。利息ってのは、銀行がもうけたお金を、預金者に払っているだけや。空中からパッと出てくるわけやない。金利の分だけお金が増えると思うのは、よくある誤解や」
七海は、意外そうな顔をしたが、しばらく考え込んで納得したようだった。
「投資銀行に入って、真っ先に金利について教わるので、金利の分だけお金が増えていくものだと思い込んでいました。全体の視点で考えていなかったです」
『きみのお金は誰のため』116ページより

金利の上昇によって、受け取るお金が増える人がいれば、支払うお金が増える人もいる。全体として重要なのは、経済活動がどのように変わるかだ。

日本銀行ができるのは、2%という物価目標に過ぎない。17年ぶりの利上げで盛り上がるのはいいが、実質賃金が減っている現状をどうにかする経済対策を考えないといけないだろう。

田内 学 お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家

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たうち・まなぶ / Manabu Tauchi

お金の向こう研究所代表・社会的金融教育家。2003年ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブなどの取引に従事。19年に退職後、執筆活動を始める。

著書に「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」総合グランプリとリベラルアーツ部門賞をダブル受賞した『きみのお金は誰のため』のほか、『お金のむこうに人がいる』、高校の社会科教科書『公共』(共著)などがある。

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