「大谷翔平」にたとえて日銀の政策変更を説明する 「日銀=大谷翔平の熱狂的ファン」でYCCを解説
つまり、銀行には、政府が借りた金額(売り出した国債の金額)と同じだけのお金があり、国債は日本円の金融商品の中ではいちばん信用力のある金融資産だから、国債を売りさばけなくなるということは考えにくい。
大谷選手がいなくなっても、ロサンゼルス市民にとっていちばん好きな娯楽が野球観戦なのであれば、チケットを買いたいと思う人は引き続き存在している。しかし、買うかどうかは値段によるだろう。
最終的には「預金者の行動」が金利を決める
このように考えると、銀行が国債を買えなくなることはないが、問題は金利水準だ。どれくらいの金利であれば国債を購入するのか?
最終的には、これは僕ら預金者次第である。僕らが5%の預金金利をもらっても満足することなく、「その程度の金利しかもらえないなら、預金しないで使うよ」と預金を引き出すような状況になれば、金利は5%を超えることになる。
しかし、ありえるだろうか? これだけ老後に備えて貯めようとしている状況で、そんなことが起こるとは思えない。預金金利が1%ももらえるなら、喜んで預ける人がほとんどだろう。そうであれば、銀行が国債を買う金利水準もその程度になるだろう。
大谷選手がいなくなっても、ロサンゼルスの中でいちばんエキサイティングな場所がドジャースタジアムなら、チケットを買ってくれる人は存在している。それと同じようなものだ。
今回利上げした理由も、春闘で5%の賃上げを達成できたからだと言われている。たしかにこの数年物価も上昇して、一部の人の賃金は上がっている。しかし、これは景気がよくなったからだとはとても考えにくい。
実態は、輸入品の値上がりによって、国内の物価が上がっただけだ。国内の物価を上げた後に輸入価格が下がったことが、企業に利益をもたらして賃金を上げられただけで、景気が本当によくなっていると感じている人はほとんどいない。今後も5%上がり続けると思っている人は存在しないだろう。
国の信用力や格付けについて議論する人もいるが、エンドユーザーである預金者が気にしないかぎり、それが国債金利に反映されるとは思えない。
1つの気掛かりは財務省の対応だ。通常、長期チケットが売れ残りそうであれば、代わりに短期のチケットを増やすことで需要と供給のバランスをとる。
ところが、YCCが導入されていた期間は、市場のニーズをヒアリングする機能が失われていた。以前は生命保険会社などが、30年や40年のチケットを欲しがっていたが、今ではさほど必要なくなっているという話を聞く。
YCCを終了したところで、根本的には長期金利がさほど上がるとは思えないが、財務省のヒアリング機能が回復しなければ、金利が乱高下する可能性はありそうだ。
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