始まりは"のど痛"から「人食いバクテリア」の怖さ 抗菌剤服用を途中で勝手にやめるのは「超危険」

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溶連菌は、環境中に広く常在するグラム陽性菌の1つで、通常嫌気性菌(酸素がない環境で生育する)である。感染した人からの唾液や分泌物を介して飛沫感染する。

溶連菌に感染すると、さまざまな症状が表れる。

もっとも多いのは急性咽頭炎だ。6~12歳までの学童期に多いが、成人でも珍しくない。成人の咽頭炎の5~10%が溶連菌によるものと考えられている。38℃以上の発熱と、咽頭痛が主訴で、ときに吐き気を伴う。

筆者はナビタスクリニック新宿で診療しているが、最近は毎週数名の溶連菌感染患者を診察している。溶連菌感染はインフルエンザやコロナほど高熱のことは少なく、関節痛を訴えることは稀だ。一方で喉の痛みが強く、「痛くて食べられない」という人もいる。喉を診察すると、全体的に赤く腫れている。

このような症状を訴える患者に対し、筆者は溶連菌検査を行っている。綿棒で咽頭を拭って、溶連菌が作り出す多糖体抗原の有無をチェックする。簡易キットが市販されており、手順に従い検査をすれば、数分で結果が判明する。

検査の感度(病気の人を見つける精度)は80%以上で、偽陽性(病気ではないのに病気と判定されること)が生じることは稀とされている。信頼できる検査だ。

溶連菌による咽頭炎と診断された場合は、カロナールなどの解熱鎮痛剤やトランサミンなどの抗炎症剤を用いた対症療法に加え、ペニシリン系の抗菌剤を使う。

免疫反応で体の組織が障害

溶連菌に感染した場合、溶連菌が咽頭などの組織を直接傷つけるだけでなく、溶連菌に対して引き起こされた免疫反応が、さまざまな臓器を障害することがある。リウマチ熱や急性糸球体腎炎は、そのような免疫合併症である。

リウマチ熱は関節リウマチとはまったく別物で、溶連菌に対して反応した免疫が、本来の標的でない心臓の弁膜組織や関節も攻撃してしまい(交叉反応)、後年、心臓弁膜症や関節炎を発生させる。

急性糸球体腎炎は、溶連菌の成分と抗体が複合物を形成し、それが腎臓の糸球体という部分に沈着することによって起こる。

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