ドラマ「不適切にも…」で考えた"炎上"問題の本質 不意に生み出される"炎上"に適切に対応する4つの視点
ドラマの中での描写には誇張やデフォルメはあるが、現在起こっている“炎上”のプロセスは、おおむねこのような感じだ。
「予言の自己成就」という言葉がある。人がある事柄について「そうなる」と思い込んでいると、その事柄が実際に実現してしまうという現象を示している。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大時に「トイレットペーパーが品薄だ」という情報が拡散することで、買い溜めが起きて、店頭から本当にトイレットペーパーが消えてしまうといった現象がそれに当たる。
“炎上”についても、炎上とまでは言えない段階で“炎上した”と言われて騒がれることで、本当に炎上が起きてしまう――といったことが実際に起こっている。ドラマの中で描かれていたのも、まさにそうしたケースで、たった2件の批判的な投稿がきっかけで炎上が起きてしまっている(実際に2件程度の投稿で炎上が起きるケースは、筆者は見たことはないが‥…)。
筆者は、広告業界で電子掲示板、ブログ、SNS等の口コミを分析して、炎上対策を講じる仕事を10年以上にわたって行ってきた。その際には、対象とする事象について「何件の投稿があるのか?」「そのうち批判的な意見はどのくらいあるのか?」を分析して判断をする。コタツ記事の場合、そこまで口コミデータをしっかり読み込んで“炎上”だと判断して書かれていることは、まずないと言ってよい。
“炎上”が作為的に作られてしまうという問題
明確な炎上の定義があるわけではないが、100件や200件程度の批判的なコメントが出ていても、一般社会に対する影響力はさほど大きくない。したがって、その程度の話題量では炎上とは呼ばないのが一般的だ。
ところが、コタツ記事では、アクセス稼ぎのために「批判殺到」「炎上」「物議」といった刺激的な言葉を使って、起こった事態を解説する。状況を直接知っているわけでも、さほど詳しく調べたわけでもない第三者が「これは炎上だ」と解釈して、SNSで批判をして火に油を注いでしまう。
筆者の経験では、こうした事態が加速したのは、新型コロナウイルス感染問題の前後あたりからだ。
コロナ禍の2020年4月、テレビ放映されたアニメ「サザエさん」でゴールデンウィーク中の外出が描かれていたことが「不謹慎」とされて“炎上”が起きた。東京大学の鳥海不二夫教授(当時は准教授)の分析によると、この番組内容に関するX(当時はTwitter)上の批判的な投稿は少数だった。しかし、デイリースポーツがそれを“炎上”として報道(後で訂正はしたが)し、この記事が拡散されたことにより、炎上したのが事実であるかのようなイメージが定着していってしまったという。
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