東証・大証統合の前途多難《下》--取引所世界再編の猛威と国内統合の意義
また、香港取引所やシンガポール取引所、はたまた東証+大証連合などアジア勢が再編の核になれるかどうか。時価総額や中国の成長性を考えれば、香港取引所の資格は十分と言えそうだ。
日本の取引所については、「日本だけだと、こうしたグループには入れない。どう多国籍化するかが課題だが、日本の企業で多国籍化した例はほとんどない。多国籍化した企業を経営する力が持てるかどうか」と、野村総合研究所未来創発センターの大崎貞和・主席研究員は疑問を呈する。
また、他の有力グループの傘下に入る可能性についても、「日本の重要性を評価されての話であり、本来は歓迎すべきだが、社会的に受け入れられるかは別の問題」と指摘する。
日本の法令では、外国の取引所は原則として国内の取引所の株式を20%以下しか保有できず、例外的に認められる場合でも50%以下とされる。取引所の「独立性」を守るこうした規制を見直すか否かは、アジアでの取引所再編が本格化していく中で、重要な検討課題となりそうだ。
海外でも、取引所の買収計画が被買収国の社会的反発によって白紙撤回されるケースが見られる。シンガポール取引所によるオーストラリア取引所の買収計画に対し、豪州政府は「国益に反する」として却下。議会内には「買収は、シンガポールへの服従を意味する」(野党党首)との懸念も出ていた。また、TMX買収を計画していたLSEは、TMXの大株主でもあるカナダの機関投資家グループが対抗してTMX買収に乗り出したため、計画を撤回している。
主要企業が上場している取引所を海外にコントロールされることは、自国の産業政策にかかわるとして政策的な観点からの反発とともに、純粋な国民感情からナショナリスティックな反発を招きやすいことも事実だろう。そのため、国境をまたぐ統合の場合には、一方的な買収・吸収合併という形をとるのではなく、共同持ち株会社の下に両社が縦割りで併存していく形が現実的ともいわれる。