同誌の以下のロジックは、大いに説得力があるのではないだろうか。
* 投資家を強気にしているのはAI(人工知能)に対する楽観論である。株価を押し上げたのは、2月22日に発表されたエヌビディアの決算だった。同社は人工知能モデルの学習に不可欠な半導体の市場を鉄壁に握っている。2022年10月、オープンAI社がチャットGPTをリリースする以前は、エヌビディアの利益の大半はゲームグラフィックス由来であった。その後、同社の株価は5倍に上昇したが、時価総額2兆ドルに押し上げた熱気は、ドットコムバブルのような誇張ではなく、冷徹な利益計算によるものだった。
* AIに対する極度の興奮は、マイクロソフトなど「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるほかのハイテク株にも及んでいる。彼らはAIブームを信じてエヌビディア製のチップを買いあさっているが、多くのスタートアップ企業が分け前にありつこうとしているので、競争が今後の利益を抑制するはずだ。
* AIは経済全体の生産性を向上させる、というテクノ・オプティミズムもある。しかしほかの基礎的技術から得られる教訓は、それらを活用できるようになるまでには時間がかかるというものだ。今日の生成AIはまだ初期段階である。たとえいつかはAIが社会を変革するにしても、今日の投資家たちが儲かる企業を選別することは容易ではあるまい。ドットコムバブルの信者たちは、インターネットの革新力については間違っていなかった。しかし彼らは丸裸になったのである。
多くの人が忘れ去っている2000年のドットコムバブル
今の米国株高に、リーマンショック以前の2007~2008年当時のような危うさがあるとは考えにくい。証券化商品により不動産バブルが見えなくなり、それには高い格付けがついていて、銀行にはモラルハザードがあって、結果的に砂上の楼閣ができていた、なんてことは今では考えにくい。
監視も厳しくなっているし、金融システムも以前より強靭になっている。何よりその後の国際金融危機の記憶は、なおも多くの人にとって鮮明である。ただし2000年のドットコム(IT)バブルは、多くの人が忘れ去っているのではないか。今のAIブームに当時と似たような構図があることは、どうも否定できないように思える。
トピックボードAD
有料会員限定記事
マーケットの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら