この点について、前掲の自民党財政再建に関する特命委員会の最終報告は、それが杞憂であることを示唆している。要するに、歳出額の目標設定が緊縮財政であるかのようにみえるが、そうではないということだ。
最終報告では、経済再生と財政再建の両立を目指すとともに、安倍政権3年間の経済再生と歳出改革の努力を今後も継続・強化させていくことを求めている。苛烈な緊縮財政を求めているわけではない。
この3年間を振り返って、歳出改革を進めたけれども成長を阻害したかといえば、そんなことはない。
過去3年間の歳出の伸びは、社会保障費では高齢化の伸び程度、非社会保障費はほぼ横ばいであった(ここでの歳出では震災復興予算は対象外)。これを今後も堅持できれば、2020年度に歳出改革によって目標はほぼ達成できる見通しである。その見通しは、5月12日の経済財政諮問会議にて、麻生太郎副総理の提出資料「財政健全化計画の枠組みについて」で明確に示されている。
成長阻害しない特命委案と諮問会議案の有機的結合を
過去3年間の歳出改革を継続・強化しても、歳出総額は今後純増となる(歳出額の減少とはならない)。つまり、歳出の純増額を小さくするまでである。その程度ならば、経済成長を阻害するものではない。それでいて、歳出主導の財政健全化が実現できる見通しである。歳出額の目標設定を提起した特命委員会最終報告は、自民党の機関決定を経ており、重いものである。
したがって、歳出額の目標設定を、対立の構図ではなく、財政健全化計画の信憑性を高めるための方策として受け入れることで、これまでの諮問会議での議論と有機的につなげられるはずである。「骨太の方針」に盛り込まれる財政健全化計画は、
(A)2018年度に基礎的財政収支赤字対GDP比を1%程度にすることを目指し、これが未達の場合には歳出面・歳入面においてとるべき追加措置を検討する。ただし、2018年度までに想定以上の税収増があれば、当然それは収支改善に盛り込まれる。
(B)歳出額の目標設定として、安倍内閣における過去3年間の歳出の伸びを今後も継続・強化することによって、2020年度に基礎的財政収支黒字化を達成できる道筋を示し、絵に描いた餅という批判を避ける。
(C)社会保障をはじめとする個別の改革策は、同意できるものをすべて盛り込む。ただし、個別策の削減額は示さない。これにより、「削減額ありきの改革」でないことを印象付ける。
といった線で、まとめられると思われる。
財政健全化計画に向けて、いよいよ議論を収束させる時期である。
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