「トーマス列車」鉄道会社の再建を阻むもの 大井川鉄道は生き延びることができるか(下)
なぜ、エクリプス日高は大井川鉄道のスポンサーとして名乗りを上げたのだろうか。
トーマス号という切り札を見つけたというのは大きな要因かもしれない。近年、首都圏近郊では、秩父鉄道や真岡鉄道、JR東日本の磐越西線・上越線など蒸気機関車を走らせる路線が増えて、SL運転の元祖である大井川鉄道の存在感が相対的に埋没していたのは否めない。他社と差別化を図る上でも、子どもたちにもお父さん世代にも人気の「きかんしゃトーマス」というキャラクターを使えるメリットは大きい。
情報発信力強化とツアー依存からの脱却がカギ
そのトーマス号だが、昨年に3カ月間、走らせてみて課題も出てきた。トーマス号に話題と人が集中しすぎたのだ。
見物客もあわせると20万人の人が沿線に押しかけたと言うが、路上駐車や渋滞があちこちで発生し、住民たちからの苦情が相次いだ。一方で、通常仕様の「SLかわね路号」の空きが目立っていたのは気になる。井川線の利用者も増えなかった。契約の関係で運行期間中以外はキャラクターを見せられないとか制約もある。契約は3年間、2016年までだが、トーマス号人気を多方面へと広げていくための仕掛け作りを期待したい。
大井川鉄道は地域経済活性化支援機構と新スポンサーのエクリプス日高の参加を得て、金融機関に債務免除を受けた上で、次のステージを目指す。支援を受けて債務が減れば、経営はかなり楽になるだろう。
スタッフたちは仕事熱心な人ばかりだ。私個人も頻繁に利用してきたし、友人たちと団体列車を走らせたときにもお世話になった。彼らのホスピタリティもよく知っている。困難はたくさん待ち受けているかもしれないが、なんとか乗り越えてくれるだろう。
トーマス号は再生のための大きな原動力になると思うが、他に工夫できるポイントはないか。今後、新経営陣が目指すべき3つの方向性を指摘したい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら