客観的に考えれば、店主の文法能力と店の品ぞろえは別の話だ。にもかかわらず、実際にはそう受け止められなかった。被験者は、気づきやすい具体的な要素(いい加減な看板)を利用して、無関係の、しかし答えの出しにくい要素(品ぞろえ)について予測を立てるヒントにしたというわけだ。
ハロー効果がしょっちゅう起きるのは不思議でも何でもない。ハロー効果には大切な役割がある。生活のあれこれが楽になるのだ。
毎日の生活で出会う物事のすべてをいくつもの指標で細かく評価するのは面倒だし、時間もかかる。一番はっきりわかる性質をヒントにして、それ以外のわかりにくい要素を推し量るための代理指標にしたほうが、物事は迅速に判断できる。
ダニエル・カーネマンは著書『ファスト&スロー』でこう説明している。
「まさにこれが直感的なヒューリスティクスの本質だ。人は難しい疑問を目の前にすると、その疑問とは別の簡単な疑問に対して答えを用意することが多い。たいていの場合は、自分が問いを置き換えてしまったことを自覚していない」
ハロー効果をマーケティングに活用する
ハロー効果をマーケティングに活用して、遠回しに狙いを達成することもできるだろう。
ある領域で際立った成功の部分があれば、それが無関係な特徴についてもイメージをよくするので、本当の目標が間接的に叶うというわけだ。たとえば品質に対する消費者の認識を高めることが本当の目標である場合に、代理指標として、好感度を上げる工夫をすればいい。
だが、できるからといって、そうすべきであるとは限らない。ハロー効果で多くの指標が連動するとはいえ、必ずそろって動く保証はないからだ。指標が完璧に連動しないのなら、間接的なアプローチが無駄になる可能性もある。ブランドの好感度を大きく高めても、品質の評価はちょっとしか変わらないということもありえる。
だとすれば、この作戦はいつ使うのが得策なのだろう。ハロー効果を狙うのが合理的かどうか、検討する必要がある。
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