優秀な人材を、公正に競わせ、上層に引き上げる仕組みがある。
所管省庁との折衝、役員会への報告、適時開示の準備……。
日立製作所で何年もリスク案件となっていた電力プロジェクトの、うんざりするような事後処理が一服し、本社管理部門で担当をしていた40代後半のT氏にも、やっと異動のチャンスが訪れた。
だが新部署でも一息つけはしなかった。待っていた役職は、デジタルシステム&サービス部門のとある管理部署のトップ。部門の経営会議に出ると自分が最年少だった。次世代リーダー候補としての新たな試練が、会社からT氏に課されたのだった。
険しい日立の出世街道だが、若手のうちはまだ穏やかだ。
出世競争の本番は30代半ばから
総合職で入社した新卒社員の場合、30歳前後で就任する主任までは、同年代でさほど差がつかず段階的に昇進していく。
出世競争の本番は、30代半ば、管理職の課長級になってからだ。
年収は1000万円の大台に乗る一方、仕事もひときわハードになる。日立のシステム部門で働く30代の主任社員は「課長は大変すぎる」と話す。「自分のプロジェクトのマネジメントをしながら、予算管理をし、部下のマネジメントや人事もしないといけない」。
転職などで部署に欠員が出た場合、人事部門に掛け合って補充の手配をするのも管理職の仕事だ。
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