シン「経営と執行」の分離。
史上最大の赤字を機に聖域なき改革を徹底。グローバル、デジタル、ガバナンスの面で、もはや“伝統的日本企業”とは呼べないほどの変貌を遂げた日立製作所。
日本企業は日立から何を学ぶべきか。『週刊東洋経済』3月9日号の第1特集は「シン・日立に学べ」。
実施が既定路線となっている議案の「審議」に参加し、少しだけ意見を述べて、2時間ほどで終わり──。
それが、日本企業の社外取締役の日常だ。経産官僚出身で、2022年まで日立製作所の社外取締役を務めていた望月晴文氏も、就任当初はそんな意識だったという。
「一言ぐらいは大事なことを言わんとな、と思って臨んだ」
しかし、日立で見たのは予想外の光景だった。議事中、当時社外取締役だったジョージ・バックリー(米3M元会長)氏が、不意にメモを取り出し、何事かを猛烈に書き出しているのを見た。
本当の意味での「監督と執行の分離」
「限られた時間内で、なるべく多くの意見を言うため、彼は議論の途中で自分が発言したい内容をまとめていたんだ」
そして発言の出番が来ると、鋭い意見を「機関銃のように」まくし立てているのを見た。それに対し答弁漏れをしないように、と当時社長の中西宏明氏は、発言内容を必死にメモしていた。
「本当の意味での『監督と執行の分離』を、日立の社外取締役としての10年で知った」
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