1兆円で買収した米ITが急成長。日立本体の業容も変わりつつある。
「売り上げがたった1000億円台。そんな会社をなぜ1兆円で買うのか」──。
2021年1月。提案した買収案件が、取締役会でそんな批判の数々を浴びた後、東京・丸の内の日立製作所の本社ビル27階を後にした担当常務の德永俊昭(現副社長)は、焦燥感に駆られていた。
そのとき諮った買収対象はグローバルロジック(GL)。米国の新興ITサービス企業である。
GLは親会社の投資ファンドなどが売却の意向を示し、IPO(新規株式公開)をメインに準備を進めていた。
13人中10人を社外取締役が占める取締役会を、あと3カ月以内に説き伏せられなければ、日立による買収の話は流れてしまう。もしそうなれば「ルマーダ」を核とする日立のデジタル戦略も見直しを迫られかねなかった。
周囲の評判は芳しくなかった
IoTプラットフォームと銘打ち、当時社長の東原敏昭(現会長)が16年にぶち上げたルマーダだが、周囲の評判は芳しくなかった。競合の米ゼネラル・エレクトリックや独シーメンスが類似した戦略をすでに発表していたためだ。
ルマーダの生みの親、副社長の小島啓二(現社長)は顧客目線でのサービス展開を構想していたが、肝心なITサービスの企画・立案の力が弱かった。日立はむしろ、顧客の指示に従って、きっちりと造るような開発を得意としていた。
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