飼い犬に「狂犬病ワクチン」、日本でどこまで必要か 海外渡航前に知っておきたい"人間のワクチン"
脳に達したウイルスは神経細胞に次々に感染し、脳炎を起こす。狂犬病の「狂」とは、脳炎を起こして興奮し、刺激に敏感になった状態なのだ。脳炎を起こした犬は周りの動物や人間にかみ付き、ウイルスを拡げる。人間も同様で、脳炎が悪化すると死に至る。脳炎を発症すると治療する術はない。狂犬病治療に成功したとの報告はあるが、治療法は確立していない。
現時点においては、日本国内には狂犬病に感染した動物は報告されておらず、国内に狂犬病ウイルスは存在しないと考えられる。よって、狂犬病ワクチンを打っていない動物にかまれても狂犬病に感染することはない。
実は、日本のように狂犬病がコントロールされている国は、世界では多くない。3年以上国内で狂犬病感染動物が見つかっていない場合、狂犬病清浄国・地域とされる。現時点では、日本政府はオーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム、アイスランドを清浄国と認定している。オーストラリアを除くすべての大陸では狂犬病が発生し続けている。
狂犬病が国内に侵入しないよう、さまざまなルールも定められている。海外から動物を日本国内に持ち込むには、動物検疫の手続きが必要だ。日本政府が認めた清浄国以外の国から動物を連れてくる場合、最長で180日間は係留施設に預ける必要がある。何ら病気がないことが確認されるまで、ペットは家に帰ることができないのだ。
いつでも国内に狂犬病は侵入しうる
ただし、動物検疫を実施していても、抜け穴はある。日本に寄港した外国船から、中で飼われている犬が上陸することもあるだろう。また、貨物船のコンテナにコウモリが潜んでいた事例も報告されている。コウモリは狂犬病ウイルスに感染していても発病しないため、ウイルスの運び屋になりうることが知られている。常に目を光らせていなければ、狂犬病はいつでも日本国内に侵入しうるのだ。
日本では、前述のように犬に対する狂犬病ワクチン接種が義務づけられている。しかし、アメリカでは州によって規則が異なり、必ずしも接種を義務づけていない。イギリスやフランス、ドイツも義務ではない。ただし、外国から犬を連れて行く場合は、狂犬病ワクチンが打ってあり、有効な抗体価に達していることの証明が求められる。
日本は狂犬病に関して、非常に厳しい対応をしていると言える。我が家のワンコも、注射に行くと震えるので、可哀想だし、できれば打ちたくない。しかし、狂犬病が国内で発生した際の対応を考えると、やはり打っておこうと思う。
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