KDDI、サミット開催地でつなぐ「光の道」 インターネットを支える海底ケーブルとは
その後は性能試験などを経て、砂浜に掘った穴からケーブルを中継局に引き込む。局内の通信設備と接続することで国内のネットワークにつながる仕組みだ。同時に、海側では水中ロボットを使い、ケーブルを海底に埋め込む作業が始まる。水深が深い場所ではケーブルをそのまま沈めていく。
この日、新たに敷設されたケーブルは、日米間9000キロを結ぶ「FASTER(ファスター)」。KDDIに加えて、グーグルや、シンガポール、中国、マレーシアの各通信事業者が出資する総額3億ドルのプロジェクトだ。初期設定の容量は毎秒60テラビットと世界最大規模。ケーブルや、途中で光信号を増幅する中継器など、全体のシステムはNECが一括して提供している。
2016年春にも運用を開始
KDDIは「Unity(ユニティ)」など日米間のケーブルを保有するが、「IOT(モノのインターネット)、高画質な動画コンテンツの配信などで、今後もデータ通信量が伸びることが予想される。既存のケーブルでは十分に対応できない」(グローバル技術・運用本部長の梧谷重人氏)として、新ケーブルの敷設に踏み切った。グーグルやアジアの通信事業者が加わっているのは、ファスターが日本とアジア地域を結ぶケーブル「SJC」と接続するからだ。米国とアジア間のデータ通信量も増加傾向にあるため、帯域を確保したいという需要も高まっている。
ファスターは今後、志摩のほか、7月に千葉県南房総市の千倉でも陸揚げされ、2ルートで敷設を進める(日本近海で統合)。これは、大地震などで一方が断線しても、ケーブルを利用し続けられるようにするためだ。8月には米国オレゴン州バンドンでも敷設が始まる。日米両側から作業を進め、11月には太平洋上で両ケーブルを接続、2016年の4~6月に運用開始となる計画だ。「来年のサミット開催までに運用できるようにする。計画の遅れは許されない」(梧谷氏)。
日本と世界を結び、さまざまなネットサービスを支える一本の海底ケーブル。だが、ユーザーがこうした存在を意識することはないだろう。インフラ構築の現場は、地道な土木作業の繰り返しだ。ケーブルの陸揚げに当たった現場の作業員はつぶやいた。「通信はハイテクと言われているけど、現場の作業は本当にローテクなんだよ」。
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