「派遣法改正案」のいったい何が問題なのか 不安定・低賃金なハケンが今より増える恐れ
大前提として、確認しておきたい。なぜ、派遣労働は法律によって規制されなければならないのか。まずは専門的になるが、法律の規定を引用しよう。労働者派遣とは「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律2条1号)
もう少し簡単に説明すると、派遣労働とは派遣元と労働契約を結びながら、実際の勤務は派遣先で行うという間接的な雇用形態であり、派遣先とは雇用関係がない。
必然的に不安定で低賃金を強いられやすい
この働かせ方は構造上、必然的に雇用が不安定となり、低賃金を強いられやすい。派遣先にとっては、雇用責任を回避できたり、あいまいにしたりできるというメリットがある。労働者にとっては、派遣元との間で労働契約を結びながら、実際には派遣先で働くという形式から、何らかの問題が生じた場合に責任追及が困難になるなどの不利益が生じる。
今では、日常用語としても定着している派遣労働は、1985年に労働者派遣法が制定されるまでは、「職業安定法」によって厳格に禁止されていた。歴史的に見ても派遣労働のような間接的な雇用形態は、中間搾取(ピンはね)が横行し、労働者を酷使し使い捨てにされてきた苦い経験があるからだ。
労働者派遣はそもそも法律で禁止されている働かせ方であり、労働者派遣法が制定されたことにより例外的に認められているにすぎず、この基本的な構造は数々の改正を経た今でも全く変わっていない、という基本的な視点は見過ごされがちである。
労働者派遣法が制定された時も労働組合等による大規模な反対運動が展開された。そのため、労働者派遣法は成立したものの、労働者に不利益が生じないように専門的で常用代替が生じるおそれのない職種に限定されていた。
ところが、その後の規制緩和の流れの中で、もともと限定的にしか認められなかった派遣労働がどんどん拡大されていった。1999年には対象業務が原則自由化され、2003年には製造業務への派遣が解禁されるなど派遣労働の対象は無限定に広がり、派遣労働者は2008年には202万人にも達した。現在では、いたるところで派遣労働者が働いており、違和感なく広まっている。
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