推薦入試が5割で「一般入試枠が減少」へのギモン 何歳からでも大学で学べる機会が減る危機

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例えば、ベネッセ教育総合研究所の木村治生氏は、2023年6月の日本子ども社会学会において、東大社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の共同調査の結果を発表した。

そこでは父親・母親が大学を出ていない家庭の生徒ほど、推薦入試を用いて大学に進学しており、推薦は、個人・家庭の状況を収入や職業・教育の状況からとらえる「社会経済的地位」が低い層が難関大に進学するルートになっている可能性を指摘した

また、この調査では一般入試よりも推薦入試を使用した人のほうが、年収が低い家庭から難易度の高い大学に通える可能性が高くなっていることも示されている。

現在、「低所得・非大卒家庭の一発逆転の手段」としては、むしろ一般よりも、推薦のほうが有利に働いているかもしれないという可能性もあるのだ。

文科省の大学入学者選抜実施要綱にも、「各大学は、年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する」という基本方針があるが、選抜入試の推進が「生まれ」で決まってしまう格差を是正する狙いもあるのだとすれば、問題視される入学者の学力面や採点基準などの不平等もむしろ、不利な環境にいる人たちのためには、ある程度は仕方がないと捉えることもできるだろう。

推薦入試は同じ手段で平等に選抜する「試験の公平性」よりも環境格差・貧困格差を縮める「教育の公平性」から判断した場合、実際に一定の成果を上げているとも考えられるのだ。

過年度生・再受験生はどうなるのか

しかし、このまま「教育の公平性」を大義名分として推薦入試を推し進めていった場合、確実に切り捨ててしまう人たちがいる。それは、20歳を超えてから初めて大学に入る、もしくは入り直す過年度生・再受験生の存在だ。

文部科学省は施策の1つとして「誰もがいくつになっても学び直し、活躍することができる社会の実現」を目指している。

一方で、旧帝国大学や早稲田大学・慶應義塾大学など難関私大で実施される現在の推薦入試は、そのほとんどが現役・もしくは1浪の年齢までしか出願できない。現在は出願年齢に制限がない東京大学でさえ、出願資格を2025年の入試から高校卒業後1年までに限定することを発表した。

推薦入試の増加は、一般入試の選抜枠が狭まることも意味する。出願年齢が限られた選抜方式が増えると必然的に、年を取ってから大学に入る人たちの枠が減ることも避けられないだろう。

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