「災害医療チーム」を通して見えた能登地震の課題 DMAT派遣数は東日本大震災の3倍の1000隊超え

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穴水総合病院の近隣の避難所では、新型コロナやインフルエンザのクラスター(集団感染)が発生していた。

同院で発熱外来を続けていたことから、抗原検査で陽性になった被災者が押し寄せた。病院の固定電話がつながらないため、同院の救急には予告なしに救急車が相次ぎ到着する事態となっていた。

病院には複数のDMAT隊が待機していた。ほかのDMAT隊員と話した山本医師は、「何度も出動経験がある医師は皆、災害関連死を1人でも少なくしようという強い思いを持っていた」と感じたという。災害関連死とは、災害による直接の被害ではなく、避難途中や避難後に死亡することをいう。

取材に応じる山本医師(写真:筆者撮影)

「平時なら病院は患者を一度診たら、様子を見ましょうと自宅に帰らせるが、DMAT隊は災害関連死を増やさないため、転院などを検討するなど、手厚く治療していこうという姿勢で臨んでいた」(山本医師)

さらに山本医師は、今回の能登半島地震で石川県が、震災をどうにか乗り切ろうという強い意思を感じたと話す。

「金沢市内の病院は、能登半島で機能が停止した病院の患者の転院要請を、ほぼ全部受けていた。いわゆる“全応需”の体制だった。これはなかなかできることではない」(山本医師)

■1月8日(月)午後7時半

車を修理中に突然、左半身マヒになった60代男性が穴水総合病院を受診。その後、金沢市内の病院に搬送が決まった。

伊藤氏らは約1時間後に金沢市内の病院に到着した。患者の家族などの付き添いが、「この道は通行できる」「このルートを通れば早く、目的地にたどり着ける」など、率先して道案内をしてくれたという。

そして、無事に患者を搬送し終えた伊藤氏らのミッションは終了した。

■1月9日(火)午前10時 

つくばセントラル病院のDMAT隊は宿泊先を出発。18時過ぎに同院に到着した。6日から9日まで病院救急車の総走行距離メーターは1536.2kmを示していた。

地元医療従事者も同様に被災

つくばセントラル病院はその後、2回目のDMAT隊を前回と同じメンバーで派遣した。支援先は珠洲市総合病院だった。伊藤氏は、一緒に活動した同病院の救急室の看護師と交わした会話を教えてくれた。

「医療従事者も、地元住民と同様に被災している。看護師は家に帰っても水や電気が来ていないため、七尾市にいる子どもの家に行って洗濯などをしていると話していた」

DMAT隊は災害直後の救急医療を経て、今後は高齢者施設や避難所で健康支援を続ける。被災地支援はまだ続く。息の長い支援が必要になる。

君塚 靖 えむでぶ倶楽部ニュース編集部 記者

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きみづか やすし / Yasushi Kimiduka

証券・金融畑の記者を経験した後、医療系記者に転身。2018年1月にメディカル・データ・ビジョンに入社。同社情報誌「えむでぶ倶楽部ニュース」編集部で医療・健康情報のデジタル化と位置付けられる、人が一生涯の健康・医療情報を自ら管理できるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)についてや、コロナ禍で非接触型医療の新たな形として注目されるオンライン診療などについて執筆している。同社の医療情報サイト「めでぃログ」ポータル(https://portal.medilog.jp/)向けにも記事を執筆している。

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