米中など大国に立ちはだかる「非国家アクター」 米中を一時休戦させた理由

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国家を主体にする世界秩序はどう変化するのだろう。グローバルサウスの代表的国際組織のBRICSは2024年から10カ国に拡大、中国はBRICSを新しい外交主舞台として重視する。アメリカンスタンダードを実現するためのイデオロギーだった「民主」はある種の「国際公共財」だった。

グローバルサウス諸国は「公共財」抜きに、それぞれ自国利益を最重視するエゴイズムに走る可能性があり、近隣諸国との摩擦が地域紛争多発の恐れを秘めている。西側が「世界最大の民主主義国家」と持ち上げるインドは、ナレンドラ・モディ首相の下で2023年はG20議長国を務め、国名を「バーラト」と表記した。

ヒンズー・ナショナリズムを原動力に「帝国」再生を目指す姿勢が次第に鮮明となり、「普遍的価値」との摩擦が顕在化するだろう。習氏は最近、外交政策として「人類運命共同体」を強調しているが、これを「きれいごと」と受け止めるべきではない。

習近平の「人類運命共同体」外交の狙い

習はポスト「普遍的価値」喪失の空白期を埋めるため、新たな「国際公共財」として、地球温暖化対策、対テロ、麻薬対策、核不使用などをボトムラインとする共通利益にし、国家間関係は内政不干渉、武力不行使など「平和5原則」によって処理しようする意図からである。

最後は日本だ。衰退するアメリカの忠実な「下僕」の岸田文雄政権は2023年から、グローバルサウス工作を加速し、インドとの協力関係をはじめ、ASEAN、中央アジア、太平洋島しょ国などとの協調関係を重視している。

いずれも中国を軍事的に抑止するバイデン政権の戦略を下支えする外交だ。グローバルサウス重視のため、岸田首相は2023年の国連総会演説で、お得意の「民主と自由という普遍的価値観」のフレーズを完全に封印した。

バイデン政権は、台湾問題での日本の役割増大に期待をかける。しかし自民党派閥の政治資金問題で足元に火が付いた岸田政権に、台湾問題に専心する余力はあるだろうか。

2024年は対中軍事抑止網の強化にとって重要な島しょ国との会議をはじめ、中央アジア諸国と国際会議が目白押しだ。

しかし世界秩序の激変で、後退する旧超大国の尻ぬぐいばかりしていた日本の政治的主導力など、グローバルサウスは聞く耳を持たないだろう。資金援助はもちろん拒まないが、中国には敵わない。上川陽子外相は2月12日、南太平洋のフィジーで7年の太平洋サミットの準備会合を開いたが、18の国・地域のうち外相が参加したのはパラオやミクロネシアなど6カ国に止まり、日本の影響力後退を見せつけた。

加速する衰退からの出口の見えない日本にとって中国との経済・社会関係の再構築以外に、「百年来の変化」に対応する道はない。手つかずの関係改善に向けたさまざまな取り組みが急務だ。中国は経済界や政界を使い対日改善のサインを出しているのだが。

岡田 充 ジャーナリスト

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おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

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