アメリカの一極支配を支えてきた民主など「普遍的価値」イデオロギーも神通力を失っている。ロシアのウクライナ侵攻を非難する国連決議案に多くのグローバルサウス諸国は賛成せず棄権に回った。
アメリカが言う「民主」「人権」圧力とは、アメリカにとって都合のいい「二枚舌」であることを彼らは見抜いているからだ。多くのグローバルサウス諸国は、民主イデオロギーとは無縁の権威主義国家だから「民主カード」は利かない。
プラットフォーマーが世界を変える
中国との一時停戦は「国家間」の利益調整であり、旧来型世界秩序を争うゲームである。
だがコロナ後に顕在化したのは、国家というアクター(主体)の力を超えるまでになった新しい非国家アクターとして「Google」や「Apple」などGAFAや電子商取引で急成長した中国の「アリババ」グループ、イーロン・マスク氏のプラットフォーマーの台頭だ。台湾積体電路製造(TSMC)も「虚構国家」台湾の存在を超える、非国家主体と言えるかもしれない。
中国当局は3年前、「アリババ」などを独占禁止法で締め付けを強化した。西側メディアは習近平氏とアリババ創始者のジャック・マー氏との個人的確執に焦点をあて、生産性の高い民営企業を軽視し、国有企業への待遇を厚くする「国進民退」の表れと批判した。
しかし実際は、プラットフォーマーが巨大な力を持ち、これまで国家が管理してきた金融や経済世界で、国家より大きな力を持ちかねないのを恐れたからだった。社会主義理論で言えば「社会主義初級段階」にある中国が、共産主義段階に発展する前に「国家消滅」(マルクス)しては困るのだ。その前に「偉大な中華民族の復興」を成し遂げるのが習氏の段階発展戦略だ。
欧米各国もプラットフォーマーに対する国家の管理と規制を強めつつあるが、自由主義経済という「建前」に加え、法的規制という技術的問題に直面しなかなか進まない。この領域における国家と非国家主体の綱引きと確執はしばらく続くだろう。
その答えが出ないうちに、ハマスとフーシという暴力装置をバックに持つ非国家主体の登場でアメリカは足を引っ張られている。
中東では「タリバン」や「イスラム国」などの非国家アクターは存在した。しかし今や衰退した超大国だけでは抑えは利かず、中国に助力を求めざるをえないのが実情だ。
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