米中など大国に立ちはだかる「非国家アクター」 米中を一時休戦させた理由

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イスラエルによるガザ攻撃が苛烈になると、アメリカ国内でも若者を中心にイスラエルへのコントロールを失ったバイデン大統領への反感が強まり、ただでさえ劣勢だった大統領選にも黄信号がともった。そこでバイデン氏が助けを求めたのが、何と「主要敵」中国だった。

多くの西側メディアは注目していないが、2023年11月15日にサンフランシスコで行われたバイデン大統領と習近平・中国国家主席の首脳会談の成果は、新ステージで需要な意味を持つ。会談はバイデン氏側の強い要請で開かれ、習氏を破格の待遇でもてなした。

筆者は会談の最大の成果は、台湾を争点とする「米中戦争」を、大統領選挙まで「一時休戦」することで暗黙の合意に達したとみている。

米中が一時休戦

バイデン政権が「一時休戦」を求めるのは、「二正面作戦」に加え、中国との衝突という「三正面作戦」に対応できないためだ。会談では衝突回避の具体的措置として、米中国防当局間のハイレベル会合の再開などで合意した。

これに基づき、アメリカ軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長と中国軍の劉振立統合参謀部参謀長は12月21日、オンライン協議を行った。

さらにヨルダンのアメリカ軍基地が攻撃され3人のアメリカ兵が死亡、イエメンの反政府武装組織フーシ派が紅海を航行する商船を攻撃すると、アメリカは報復攻撃に先立ち外交トップのサリバン大統領補佐官をタイに派遣、王毅外相と足かけ2日12時間にわたって会談させ、中国のイランへの影響力行使を要請した。

王毅外相の回答は明らかではないが、中国外交関係者は、紅海の武力攻撃では中国商船にも影響が出ているため、イランに対しフーシ派への自制を求める可能性に言及した。

ちょうど1年前、王毅外相の仲介工作で、サウジアラビアとイランが関係正常化にこぎつけて以来、中東における中国の影響力は飛躍的に高まり、アメリカは中東でも中国との事前のすり合わせ抜きには、軍事行動に出られなくなった。

バイデン政権はウクライナでも劣勢に立たされている。アメリカを含む西側諸国の支援疲れに加え、ゼレンスキー大統領と軍部の内部矛盾が露呈し、ロシアに好ましい局面が開かれつつある。二正面での苦戦こそバイデン氏が中国に助力を求める背景だ。

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