長期で日本株が上昇する「ストーリー」はあるのか 「短中期」では日本株ブームは終わった可能性

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そのためには、前回の「Hero is coming」に続き、効率化、劇的な真剣勝負のドラマが必要で、馬同士のレースにおける競争をさらにドラマチックにすることである。もう1つは、馬を育て、調教し、御する人々、人間の側の真剣勝負の競争が必要だ、ということだ。

ひとことでいえば、JRAの厳しい参入制限、つまり、調教師免許、試験、そして騎手免許、試験の仕組みである。そして、厩舎スタッフの身分、所得保証である。

騎手は、現在所属のないフリーの騎手が大多数になり、競争は以前よりも厳しくなったが、実際、高額賞金レースのほとんどは少数の外国出身騎手に持っていかれる一方で、JRAという枠に守られた騎手たちの限定的な争いとなっている。

「調教師の競争促進」でさらに高レベルの調教師育成を

しかし、それよりもはるかに大きな問題は、調教師と厩舎スタッフであり、まずは、調教師の競争をもっともっと促進する必要がある。

私が競馬問題を論じ始めたころから比べれば、馬房の数は成績などで多少上下するようになったが、まだまだ少なすぎる。もっと自由に持たせるべきだ。

その一方で、美浦や栗東にあるJRAのトレーニングセンターの馬房が少なすぎて、あふれる馬たちを処遇するために、最大手の社台グループをはじめ、多くの有力馬主はお抱えの外厩(JRAのトレーニングセンター以外の競争馬の調教施設)を持っている。

私が昔肩入れしていた早田牧場が「打倒社台」のために作り上げた天栄の施設は、同施設の代表だった早田光一郎氏破産により、社台グループの手に渡り、ノーザンファーム天栄となって、皮肉なことにノーザン躍進の最大の武器となった。

それはともかく、外厩をうまく使える馬主が有利な状況になってしまっており、JRAの調教師は、社台の指示に従うことで、彼らから有力馬を預けてもらい、出走直前だけ一時的に馬を預かるような形になってしまっている(もちろん、社台が有力馬を預けるのだから、優秀な調教師の先生方なのだが)。

これでは、調教師は力の発揮のしようがないし(限定的だし)、長期的な日本競馬界の調教レベルの向上にはベストとは言えない、もっと自由に、調教師同士が競争を行い、誰もが自由に(現在は出走前の10日間はJRAの厩舎に入厩しなければいけない)外厩を使えるようにし、本当に強い競走馬、レベルの高い調教師が育つ世界最高の競馬界をさらに発展させなければならない。長くなったので、具体案はまた次回に。

さて、注目の共同通信杯(11日に東京競馬場で行われる3歳馬限定のクラシックトライアルレース。芝コース、距離1800メートル、G3)は、ノーザンファーム生産で矢作芳人厩舎のミスタージーティー。社台ファーム生産のジャンタルマンタルが強敵だが、昨年末のホープフルステークス(G1)での鬱憤を晴らしてほしい。単勝。

*次回の筆者はかんべえ(吉崎達彦)さんで、掲載は2月17日(土)の予定です(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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