長期で日本株が上昇する「ストーリー」はあるのか 「短中期」では日本株ブームは終わった可能性

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例えばITバブル当時も「ITにより、在庫が要らなくなり、景気変動もなくなり、株価の変動もなくなるから、リスクは下がり、PERが以前の倍になっても、合理的である。時代はニューエコノミーに入った」という物語が語られ、暴落とともに忘れられた。この繰り返しなのだ。

「短期」「中期」では日本株のブームは終わった?

したがって、今後の株式市場動向を短期にも長期にも支配するのは、今後、短期的に、そして長期的に語られる物語がどのようになるか、予想することだ。そして、投資家たちがどのような物語を信じるか、信じないか、それを予想することこそが中立的な分析なのだ。

まず、日本国内の個人投資家はどうだろう。新NISAがあり、周りでさらに株式投資が増えている。だから自分も買いたい。さらに買いたい。つまり、買うことと整合的な物語が信じられていくだろう。

「長期投資が重要だ」「株価に一喜一憂しない」「一時的に下がっても、長期には株式は上がる」といった、古典的なストーリーが振り込まれ、彼らの多くはとりあえず、それを信じるだろう。大暴落が起きるまでは。ただし、彼らは大暴落のきっかけにはなりえない。あくまで、受動的だ。

次に、中国の投資家はどうだろう。「中国はやばくて、この流れはとりあえずは止まらない」「外交的あるいは地政学的な断絶的変化がなければ、当面流れは続くだろう」。こうしたストーリーが語られており、だから買いは続く。

海外の短期筋はどうだろう。彼らは、1月一気に買ったから、ここでは様子見だろう。そして何か次の短期的なストーリー(物語)が世界で見つかれば、日本から移していくし、米国株が動けば、株式から資金を流出させるだろう。これは短期的にマイナスの可能性があり、流れを加速させる役割がある。

欧米の長期投資家はどうだろう。大分、日本株を買った。中国から日本へのシフトも大分終了した。短期筋も長期筋も、日本というストーリーから、個別の株、これまで注目されてこなかった中型株の物色を始めている。それを買えるストーリーを探している。株主還元の余地がある企業や、依然割安な株を探し、世界の大型株ブームの終了に備えて、日本株の中で投資先を変えるチャンスをうかがっている。

つまり、日本全体の物語は終わりつつあるということだ。ということは、短期、中期的には、日本株ブームは終わる、あるいは踊り場となる。

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