8人の若手が語る、イマドキ弁護士のホンネ 「食えない」の定説とギャップのある実情

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D弁護士の事務所は労働者個人の救済が中心だが、法人との顧問契約もある。ブラック企業という言葉が市民権を得、以前なら泣き寝入りしていた労働者が声を上げられる環境は以前に比べればずいぶん整った。

それだけに依頼は増えているのかと思いきや、「需要の伸びを上回る勢いで新規参入があるので、恩恵は限定的」だという。

ただ、「世の中の中小企業の経営者にも、従業員に真っ当な労働環境を提供しなければならないという意識が徐々にに浸透してきているので、法人からの相談業務は着実に増えている」という。

「ネット軽視の事務所は、土俵にも上がれない」

一般民事中心のF弁護士は、「個人対象の一般民事はネットを有効に活用出来ていないとそもそも土俵に上がれない」と主張する。

「ネット検索でヒットしない事務所では、一般市民が事務所の存在を知る機会がないし、ホームページがなければどんな人相の、どんなことが得意だと言っている弁護士なのかもわからない。実際に複数の弁護士と会った結果、自分を選んでくれる人もいるし、その逆もある」(F弁護士)。

上の世代の弁護士には「弁護士が宣伝や広告を出すなどもってのほか」という哲学を持つ人たちが一定割合いる。だが今、一般市民は医療機関でも弁護士でも、とりあえずはネット検索で探す。ホームページも作らない、広告も出さない事務所では、その存在を知る手段がない。

専門知識を持たない一般市民には、弁護士の能力を「値踏み」する力はない。しかし、自分の人生の一大事をこの人物に託していいのかどうかという「直感」のようなものであれば、大半の人が持ち合わせているだろう。

自分の直感が「この弁護士はやめておけ」と言っているのに、ほかに探すアテがなければ、しがみついてしまう。だからこそ、複数の弁護士にアクセス出来る環境が望まれる。一般市民に必要な弁護士なのに、たどり着けない状況にあるのだとしたら、それではあまりにももったいない。

テーマ④:司法試験・司法修習はどうあるべきか

現在の司法修習への見解では、全員が実務修習は高く評価し、座学の統一修習を評価する人はいなかった。廃止に賛成かどうかでは、E弁護士とG弁護士だけが賛成で、残る6人は反対、もしくは積極的な意見を持たない。

E弁護士、G弁護士の考え方はほぼ久保利弁護士と同様で、「法科大学院教育が充実していれば必要ない」というものだった。予備試験についても例外的なルートとして本来の姿に戻すべき、という考え方だ。

これに対し、F弁護士は「裁判官や検察官が日頃どういう環境で何を考えて仕事をしているのかがわかる。大組織に入り込めるチャンスでもある」として、現在の修習の制度を評価する。

次ページ「法科大学院こそ"例外ルート"にすべき」
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