8人の若手が語る、イマドキ弁護士のホンネ 「食えない」の定説とギャップのある実情

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最初に就職した事務所を3カ月で辞めたG弁護士は、その事務所がいわゆるブラック事務所。損害保険会社が主要な顧問先で、膨大な事務作業をこなすために長時間労働を強いられ、すぐに体を壊して辞めた。復調後は就職せず独立した、いわゆる早独組である。

「最初の事務所は保険金の支払いを最低限度に抑えることがミッションだったので、自分も宇都宮先生が言う“人権を蹂躙(じゅうりん)する側に立つ事務所に入った若手”だったのだろうが、あの経験のおかげで支払いを渋る損害保険会社の手の内が体得出来た。今は保険金を請求する交渉に役立てている」という。

即独、早独は積極的に選択している人とそうでない人が二極化しているようだが、積極派は意欲が高く、営業面の能力も高い。ブラック事務所に入り、低賃金で自分の正義感に照らして疑問に思うような仕事を強いられるくらいなら、独立したほうがいいと考える。

社交的で勉強熱心でもある彼らは、弁護士会活動にも積極的。教えを請える先輩の開拓には困らない。即独の会、早独の会を作って、ヨコの情報交換にも余念がないように感じる。

「感覚的には、仕事はいくらでもある」

テーマ③:法務需要は増えているのか、減っているのか

この点は扱っている業務分野によって、決定的な違いがあった部分だ。企業法務系の事務所に就職したC弁護士は、「個人の一般民事中心の事務所だと訴訟中心になるだろうが、企業法務中心の事務所の場合は、訴訟外の業務の方が多い」という。

企業法務と一般民事双方を扱う事務所に勤務するH弁護士は「企業法務はとにかく弁護士からの紹介。弁護士の最大の顧客は弁護士」と言い切る。

現在のH弁護士の業務比率は、「事務所から与えられる仕事2割に対し、自力で獲得する仕事が8割。その8割の大半は企業法務」で、その案件獲得チャネルは主に「別の事務所の弁護士からの依頼。弁護士から来た仕事を誠実にこなし、弁護士間の信頼を得ることが、次の仕事につながる。感覚的には、仕事はいくらでもある」だという。

企業法務を扱う、比較的小規模な事務所のベテラン弁護士は、自分が引き受けた業務の下請け仕事を頼める若手を必要としている。弁護士会活動などで知り合った若手に業務を振れれば、そのためだけにイソ弁を雇う必要はなくなる。

また、多岐にわたる専門知識や経験が必要な事案の場合、業務ごとに別の弁護士に振り、自らは顧客との窓口を務めるというケースは増加傾向にある。かつては企業の法務部が何も考えずに大事務所に発注し、高額の報酬を請求されるという構図があったが、その案件が中堅以下の規模の事務所にシフトする動きが、着実に広がっている。

中国ビジネス専門の小規模事務所に勤務する弁護士は、「たとえば中国の会社の買収案件だと、ウチの事務所が労働関連の対応をし、許認可や知財関連の手続は別の事務所が対応するといった連携をとる。各事務所が得意分野を分担することで、早く、正確な対応が可能になり、クライアントからの信頼を勝ち取りやすい」という。

企業法務の比率を増やしたいと考えているG弁護士も「企業法務はとにかく弁護士同士の信頼がモノを言う。知り合いを増やし、来た仕事を誠実かつ正確にこなす。企業法務の仕事を増やす手段はこれに尽きる」という。

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