8人の若手が語る、イマドキ弁護士のホンネ 「食えない」の定説とギャップのある実情

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「過疎地域で開業する弁護士が増えたり、企業内弁護士が増えたり、これまで供給がなかった分野への進出が進んでいるのは、増員があったからこそ。数は少ないが、理工系や医学系の出身者が法曹分野に進出したことで、建築紛争、医療事故、知財関連への供給が増えていることはもっと評価されていい」(B弁護士)。

D弁護士は「誰の立場に目線を置くのかで考え方は違ってくる」という。「苦労している同期には心が痛むが、一般の市民にとって今の弁護士人口で十分かというと、それは違うとも思う。一般の市民は、自分の身に起きていることが法律問題なのかどうか、そもそもわからない」。

確かにトラブルに巻き込まれても、大体の場合、こじらせるだけこじらせてから、ようやく法律問題なのかもしれないと気づき、弁護士を探し始める。「もっと川上で相談出来る環境が整うことが望ましい。一般市民にとってのリーガルアクセスという点では、今も容易に探し出せるほどの人数にはなっていない。ただ、3000人は極端すぎる」(D弁護士)。

「数人をピックアップして決める相談者が出始めた」

F弁護士は「競争相手は少ない方がいいに決まっているから、個人的には増えないでくれたほうがありがたいが、社会全体の利益を考えたら、それは違う」という。

ネットの発達と弁護士ドットコムのような存在の台頭で、「自分のところへ相談に来る人の中には、ネットで検索をかけ、数人をピックアップして実際に会いに行き、どの弁護士に頼むか決める人がぼちぼち増え始めている。弁護士と依頼者は相性も大切。依頼する側にとっては、何人かの中から選べる方が望ましい」(F弁護士)。

修習地の栃木で就職したE弁護士は、「『地方は東京以上に食えない』などという誤った報道があるが、まったく違う」と話す。

「ノキ弁(既存の法律事務所に間借りする弁護士)も少数存在するが、その場合でも東京のノキ弁とは意味が異なり、ちゃんと面倒を見る。人数が少ないせいもあり、弁護士会全体で新人を支える体制が出来ている」(E弁護士)。

テーマ②:修習生は、法律事務所就職以外の道に消極的なのか

では、宇都宮弁護士が主張する、「修習生は法律事務所へ行きたいのであって、企業や即独は法律事務所への就職が叶わないからこそのやむを得ない選択」という主張には、どんな感想を持っているのか。

B弁護士は「自分の周囲では、消去法で企業を選んだという人も居なくはないが、積極的に企業を選んでいる人の方が多い」という。

修習生の相談相手になることが多いというF弁護士も「ワークライフバランスを考える女性は企業指向が強い。少なくとも企業は産休、育休の制度が整っている。法律事務所は基本的に零細経営なので、それに比べると企業は安定して見えるというのもわかる。彼女たちは自分の人生をどう生きたいのかを考え、積極的に企業を選んだのだと主張する」と語る。

即独についてはどうか。F弁護士は「一定期間の社会人経験があったので、営業力や事務所の経営は何とかなると思っていた。教えを請える先輩を見つけることは難しいことではないので、事務所への就職はもともと考えていなかった。ただ、まったく社会人経験がない新人が、最初は事務所への就職を望むのはごく当たり前のことだと思う」という。

次ページ「ブラック事務所の経験が生きることも」
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