2大悪弊が2025年「緊縮ナシで財政黒字化」を阻む 足元の経済対策が後を引く「基金」と「補正予算」

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約150にものぼる基金の残高は総額で、2022年度末で約16.6兆円、2023年度末でも約12.7兆円に達する見込みである。これらの基金をいついくら執行するかは、基金設置法人およびその所管省庁の判断に委ねられており、財務省は拒否権を持つような形で直接コントロールできない。

この12.7兆円もの基金残高が、いついくら執行されるかによって、2025年度の財政健全化目標の達成に影響を与えうる。

確かに、基金を造成した際の支出は、当該年度の決算段階では支出済みとなっている。しかし、それは国の会計から基金設置法人へ繰り出されたまでであって、すぐさま執行しなければ、その基金設置法人に貯め込まれたままとなっている。

問題は、基礎的財政収支の計算上、その基金から支出されたときにどうなるかである。

国や地方自治体の基金が支出すれば収支に計上

まず、基金設置法人が、一般財団法人など民間団体になっている場合は、本稿で焦点を当てている国と地方の基礎的財政収支の対象外となっている。だから、その場合は、基金に貯め込まれている資金を支出していなくても、すでに国の会計から民間団体である基金設置法人へ繰り出された段階で、国と地方の基礎的財政収支の悪化要因(財政支出として計上)となり、以後はそこから先へ、いつ、いくら支出されても無関係となる。

しかし、基金設置法人が独立行政法人など国や地方自治体の機関である場合、国と地方の基礎的財政収支の対象となり、基金設置法人から支出された段階での基礎的財政収支の悪化要因(財政支出として計上)となる。これが、本稿で問題視しているものである。

基金を造成した段階で資金を支出したかのように見えて、国と地方の基礎的財政収支の定義上(これは、GDPなどの統計の基となる国民経済計算体系の定義に即している)は、会計・勘定間の振替のようなものにすぎず財政支出とはみなされない。

そして、独立行政法人など国や地方自治体の機関が基金設置法人であると、その法人から資金が支出された年度に、その支出が基礎的財政収支を悪化させるのだ。

それがよりにもよって2025年度だったらどうなるか。

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