人生に思い悩み、絶望した彼はようやく希望を抱いたこの年から、センター試験を受け出すようになります。5浪目こそ、現役とほぼ変わらない点数だったものの、毎年コツコツ勉強を続けた彼は、ジワジワと成績を上げていきました。
「5浪〜9浪目にかけては予備校に通ってはいたものの、体調との兼ね合いでほとんど行けず、自宅で浪人していました。毎年成績が上がっていき、9浪目には7割以上を取れるようになってきました。
とはいえ、この5年間は毎年前期試験で地方の獣医学部を受け続けてきたのですが、なかなか合格できず……。9浪目に親に『大学に一度受かったほうがいい』と言われたので、地方の国公立の農学部を後期試験で受けて、はじめて合格通知を手にしました」
ついに掴んだ合格だが、入学を辞退
この合格で気分をよくしたレトロプリンさんは、合格した国公立大学に進学しようとも考えますが、悩んだすえに入学を辞退します。
「農学部を受けたのは、勉強をするうちに樹木の分野に関して興味を持ったからです。動物行動分野以外では唯一、自発的に勉強したいと思える学問でした。だから、この大学で勉強しようかとも思い悩んだのですが、もしかしたら樹木も動物行動もどちらも勉強できる大学があるのではないかと思ってネットで検索したら、東京農工大学の地域生態システム学科が引っかかって、どちらも勉強することができると知ったのです。
より深く調べていくと、東京農工大学で教鞭を執られている方の中に日本で唯一、アメリカで『米国獣医動物行動学専門医』という資格を取られた入交眞巳(いりまじり まみ)先生という方がいらっしゃいました。
そのとき、私はアメリカで最先端の獣医行動学を学んでこられた入交先生のもとでどうしても勉強させてもらいたいと思ったので、入学を辞退し、来年度の獣医学部の受験もいったん諦め、東京農工大を目指すことにしました。獣医になるより先に、専門家のもとで学ぶことで、自分もその分野の専門的な知識を身につけるほうが優先順位が高いと考えたのです」
レトロプリンさんが自身の将来の目標として目指していたのは『獣医行動診療科認定医』。これは「行動診療を通して動物と飼い主の幸福増進に貢献するとともに、獣医動物行動学分野の発展に寄与し、わが国における同分野の啓発と普及に貢献するための努力を惜しまない獣医師」のことを指す、と熱心に語ってくれました。
こうして、自分が獣医学部に入るよりもまず、専門家に会ってその人のもとで学び、自分も獣医行動診療の専門的知識を得てから、もう一度獣医学部に入り直すという一本の線が、彼の中でできたのです。
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