大糸線に直通する特急に都内から乗車するなら、松本に至るまでの中央線の車窓も決して侮れない。小淵沢付近で現れる八ヶ岳、反対側に見える南アルプスの峰々、そしてそれ以前に山梨県内で登場する富士山も忘れてはならない。
富士山といえば、車窓のメインとしてウリにしているのが富士急行線である。大月を出てリニア実験線の下をくぐり、さらに進むと左手に富士の麗姿を車窓いっぱいに堪能できるのだ。乗るならそのものズバリ、「富士登山電車」や「フジサン特急」がおススメだ。「フジサン特急」の車体に描かれた富士急オリジナルの擬人化した富士山キャラクターの数々は抱腹絶倒で、家族連れには喜ばれるであろう。
車窓だけではなく、富士山駅には富士山鑑賞用のホームベンチや駅ビルの展望テラスがあり、さらに下吉田駅にはJRから譲り受けたブルートレイン「富士」の寝台車を、富士山をバックに展示するなど富士山を多角的に楽しめる道具立てがそろっている。
九州と北海道の路線がいよいよ登場
山越え路線として古くから知られているのが上越線だ。上越新幹線の影で、すっかり閑散路線となってしまったけれど、谷川岳をはじめとする山々の眺めは相変わらずだ。ここでは、首都圏方面から新潟方面へ向かう下りではなく、2つのループ線を経由する上り線乗車を薦めたい。とりわけ越後湯沢を出発してから最初のループ線に至る区間は圧巻だ。
特急列車はとうの昔に姿を消し、わずかに残る1日数本の普通列車を利用するしか方法がないけれど、息つく暇もないほどの絶景の連続は、いつまでも思い出として脳裏に刻まれるであろう。
少々、中部地方から甲信越地区に偏りすぎたかもしれない。山岳風景としては、どうしてもこのあたりに注目してしまうのだが、ほかの地域にだってすばらしい車窓はいくらでもある。そのひとつとして、九州のど真ん中を横断する豊肥本線を挙げておこう。
その名のとおり「九州横断特急」が何往復か走っている。これに乗るのが快適であろう。熊本から乗車すると、立野のスイッチバックを行き来して、阿蘇の雄大なカルデラに入り込んでから、外輪山や阿蘇五岳をかなりの長時間車窓から眺めることができる。ごつごつして赤茶けた山々は日本離れした情景で、かつて西部劇スタイルのSL列車がイベント運転されたのもうなずけるであろう。
九州といえば、折り紙つきの絶景ローカル線である肥薩線を忘れてはならない。変化に富んだ車窓はどの区間を取り上げるか迷ってしまうが、雄大な山岳車窓ということであれば「日本三大車窓」のひとつに選ばれている矢岳―真幸間にとどめを刺す。
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