渋谷TSUTAYAの大変貌は復活の序章かもしれない 「インフラを作る」企業ミッションの再定義だ

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言い換えれば、「モノ」消費を前提とする意味での「カルチュア・インフラ」はサブスクサービスに取って変わられたが、「体験」を軸にする消費を前提とする意味での「カルチュア・インフラ」は、まだまだ開発の余地があるということだ。

そして、この業態が成功して全国に広がれば、それは間違いなく新時代の「カルチュア・インフラ」になるのだ。

SHIBUYA TSUTAYAのリニューアル後のフロア概要(画像:カルチュア・コンビニエンス・クラブから抜粋)

渋谷TSUTAYAの実験は成功するか?

絵空事にすぎないが、もし渋谷TSUTAYAが成功して全国に渋谷TSUTAYAのようなスペースが増えるのだとしたら、その拡大はわりあい簡単だと思う。というのも、ポップアップストアにしてもイベントスペースにしても、「空間」があればよいのであり、店舗開発には大きなコストがかからないからである。

「居抜き」での店舗開発も進むかもしれない。どちらかといえば、そのスペースをどのように運営していくのか、そのノウハウのほうが渋谷TSUTAYAにおいては重要になってくるだろう。その状況によっては、CCCは新しい「カルチュア・インフラ」を全国に展開していけるかもしれない。

このように、「カルチャーを通じて集まれる場所」を全国に作ることは、現代の文化の状況に対応した取り組みだといえる。そして、その取り組みの実験を、この新しい渋谷TSUTAYAで行うのではないだろうか。おまけに渋谷と言えば、たくさんの訪日客が訪れる場所でもある。そこで新たな「カルチュア・インフラ業」をするのは、日本文化を世界へと届けるうえでも、小さくない可能性を感じさせる。

そういえば、かつての渋谷TSUTAYAは、レンタル事業における新しい実験を行う「実験型店舗」として誕生したのがはじまりだった。そう考えると、今回のリニューアルは、CCCの原点である「カルチュア・インフラ」を新時代に即したものにするための「実験」を行う店舗なのだともいえそうだ。

渋谷TSUTAYAがどのようになるのか、まだ誰もわからない。しかし、近年業績が低迷するCCCにとっては、その企業理念を見直し、新しく生まれ変わるチャンスなのかもしれない。

渋谷のTSUTAYA
(筆者撮影)
谷頭 和希 チェーンストア研究家・ライター

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

チェーンストア研究家・ライター。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

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