川崎重工は「世界のヘリメーカー」になれるか UH-Xが日本のヘリ産業の将来を決める

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確かに我が国は武器禁輸政策により、武器としてのヘリコプターは輸出できなかった。しかし、民間市場向けの輸出は可能だった。米国にはロビンソンやエンストロームなどの小型の民間ヘリ専業メーカーも存在する。また軍用市場といっても、汎用ヘリの多くは民間ヘリと大差がない。仕様が多少違うだけだ。

米軍がUH-72Aとして採用したEC145/BK117(提供:エアバスヘリ)

たとえばUH-1やBK117などは民間でも軍隊でも多く使用されている。一例を挙げれば、BK117は米軍ではUH-72Aとして採用されている。また南アフリカ軍でも採用されている。さらに軍用練習ヘリには民間ヘリが使用されるのが普通だ。つまり、軍用市場といってもかなり民間用ヘリを使用している。トヨタや日産の民間用のSUVやバンはそのまま軍で多数使用されているが、それと同じだ。

南アフリカ軍で使用されているBK117

また現在では、実は民間ヘリの方がより高い信頼性、安全性を求められる。このため民間ヘリから軍用の派生型が開発されることが多く、その逆は極めて少ない。つまり純然たる軍用ヘリが輸出できなくともハンディは低いはずなのだ。事実、エアバスヘリやアグスタがシェアを大きく伸ばしたのは小型、中型の民間用ヘリに傾注したからだ。

実は、日本の国内ヘリ市場は自衛隊を除いても世界有数だ。警察、海保、消防、地方自治体、最近はドクターヘリも増えてきた。また報道ヘリが100機以上もある国は日本だけである。つまり、かなり大きな国内市場が存在する。これはヘリ産業にとって大きな利点だ。このような肥沃な国内市場が存在するにも関わらず、日本のヘリ産業はリスクをとって非軍事のヘリマーケットに進出することはなかった。

このため日本のヘリメーカーは価格や性能、品質をユーザーから厳しく問われることはなく、またメーカー同士の競争もほとんどなかった。つまり極めて非効率な国営企業的な体質になってしまった。

世界では合併統合が進んだ

対して世界では1990年代以降、競争の激化によってヘリメーカーの統合再編が進んできた。欧州のヘリメーカーは、先述のエアバスヘリとアグスタ・ウエストランドの2社に集約され、ロシアや中国ですら、ヘリメーカーは集約されている。

輸出はしない、国内の民間市場(非軍事)市場にも進出する気がない、それでいてリスクのまったくない防衛需要だけで弱小メーカーが3社も温存されている日本のヘリ産業の現状は異常というしかない。黙っていても、官需が転がり込んでくる。競争はなく、市場での生き残りというインセンティブもないため、性能・価格ともに競争力のないヘリを開発している。

本来、日本の航空産業にとってヘリコプターは極めて参入しやすい分野だった。ヘリが本格的に使用され始めたのは1950年代からで、戦後の航空機製造が禁止された「失われた7年」のギャップが存在しないも同然だった。

参入も容易だった。大型旅客機などは開発コストも極めて高いし、リスクも初期投資金額も大きい。またユーザーもほとんどがエアラインなどで、新規参入組が入りこむのは難しい。対してヘリならば、ユーザーは民間ならば個人や企業のビジネス用などの小口の顧客が多く存在している。

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