ペルシア時代の面影残る「イラン」の高速道路(1) 世界遺産も多い大国の大都市を結ぶ交通網

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イランには紀元前のアケメネス朝ペルシア時代に、「王の道」が作られている。こうしてみると、イランの経済や文化にとって、いかに道路が重要であり続けたのかが伝わってくる。

なお、東京からトルコの西端、ヨーロッパの国境までを結ぶアジアハイウェイ(アジア32カ国を走る全長14.1万kmの道路網)の主要ルートである1号線(AH1)は、アフガニスタンからテヘランを経てトルコへとつながっており、イランの高速道路の一部もAH1に指定されているほか、2号線などもイランを通過している。

日本の道路の起点である日本橋の上を走る首都高速はアジアハイウェイ1号線の東の起点でもある。(筆者撮影)
日本の道路の起点である日本橋の上を走る首都高速はアジアハイウェイ1号線の東の起点でもある。(筆者撮影)

一見砂漠や高山ばかりに見えるイランは、一大農産国でもある。野菜やフルーツ、ナッツ類の生産高も多く、農産物の自給率は90%に達する。その秘密は、砂漠の地下に張り巡らされた「カナート(地下用水路)」にある。扇状地の地下水を水源とし、蒸発を防ぐため地下に造られた灌漑施設だ。

バスに乗っていると、砂漠の中に数メートルおきに土が盛り上がっているところが見える。これが地下を掘った井戸のあとで、今も通風や修理に使われているそうだ。「ペルシア式カナート」は2016年に、「イランのキャラバン・サライ」は2023年に、それぞれ代表的な施設が世界遺産に登録されている。

ペルセポリスほか世界遺産をめぐって

今回の旅では上記のカナートの1つも含め、イランにある27件の世界遺産のうち8件を訪れることができた。

雄大に広がる世界遺産「ペルセポリス」(筆者撮影)
雄大に広がる世界遺産「ペルセポリス」(筆者撮影)

その多くが、ペルシア文化の神髄を体現する壮麗な遺跡や建造物で、中でもイランのみならず世界的に知られる古代遺跡「ペルセポリス」や、16世紀末に建国し、17世紀にかけて繁栄を極めたサファヴィー朝の都が置かれたエスファハンの2件の世界遺産「エスファハンのイマーム広場」「エスファハンのマスジェデ・ジャーメ(金曜日のモスク)」などは、本当に見応えがあった。

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ちなみに、先にあまり利便性が高くないと述べたイランの鉄道も、「イラン縦貫鉄道」として2021年に世界遺産に登録されている。次回は、イランの高速道路のサービスエリアについてお伝えしたい。

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佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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