ペルシア時代の面影残る「イラン」の高速道路(1) 世界遺産も多い大国の大都市を結ぶ交通網

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通過数日後に、通過区間と料金がスマホを通じて利用者に通知され、口座の残高が足りずに引き落とされないという事態を防止する注意喚起を行っている。

高速道路の料金所。日本の料金所のように案内表示などはなくシンプル(筆者撮影)
高速道路の料金所。日本の料金所のように案内表示などはなくシンプル(筆者撮影)

今回の移動で、日本にはないシステムが採られていることを知った。それは、バス運転手の労働時間規制のための警察によるチェックである。

ツアーバスの運転手は、都市の郊外にある交通警察のチェックポイントで必ず下車し、チェックを受けなくてはならないという。

ガイドの説明によると、これは長距離の路線バスやツアーバスの運転手に義務づけられていて、乗客の安全を図るためもあって、労働時間を管理するための法律によるものだそうだ。

高速道路上に設けられた、警察によるチェックポイント(筆者撮影)
高速道路上に設けられた、警察によるチェックポイント(筆者撮影)

また、もう1つイランらしいと感じたのは、アフガニスタン方面からくる高速道路に麻薬をチェックするための検問所があったこと。

アフガニスタンは、しばらく前までアヘンの生産量が世界一で、イランはそのアヘンの陸路での密輸ルートになっていた。そのため、専用の取り締まりの検問所が設けられているのである。

キャラバン・サライとカナート、雄大な車窓景観

イランの高速道路を走行していて最も印象的だったのは、その雄大な車窓景観だ。見わたす限りに地平線が広がる砂漠の中を走るルートもあれば、木1本生えていない岩山が迫る道路もある。

またイランには、アルボルズ山脈、ザグロス山脈という2本の大きな山脈が走っており、どちらも標高4000mをはるかに超える。今回、訪れたのは真冬だったため、高峰は冠雪しておりその眺めも見事だった。

車窓風景でもう1つイランらしさを感じさせるのは、「キャラバン・サライ」と「カナート」である。

高速道路脇に残されたキャラバン・サライの遺構(筆者撮影)
高速道路脇に残されたキャラバン・サライの遺構(筆者撮影)

イランは古代、中国とローマを結ぶシルクロードが通過する交易路でもあった。荷物を積んだラクダと商人が宿泊するために数十キロごとに設けられたのが、キャラバン・サライ、つまり隊商宿であり、往時の建物がそのまま残っているところも少なくない。

2000年前のシルクロードと隊商宿が、現在の高速道路とサービスエリアに引き継がれているようで、そのつながりを強く感じることができた。

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