初代「プリメーラ」欧州的クルマづくりの衝撃 欧州COTY2位にも輝いた1990年代日産の意欲作

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プリメーラに話を戻すと、サスペンション形式はフロントがマルチリンクで、リアはパラレルリンク式ストラット。1990年にはフルタイム4WDが追加され、さらにビスカスカプリングで前後のトルク配分を制御する「アテーサ(4輪駆動最適制御システム)」を持った仕様も登場した。

私は、当時このプリメーラが大好きだった。ひとことで言うと「たいへんバランスのいいクルマ」だったからだ。

当時の日産には、シルビアのほかにも「180SX」「スカイライン」「ステージア」「セフィーロ」など、後輪駆動車も多く、大勢が前輪駆動方式へと移る前夜みたいなものだった。

そこにあってプリメーラは、硬めのサスペンションセッティングによって、アンダーステアなどパワフルな前輪駆動のネガをつぶし、カーブではくいくいと気持ちよく曲がってくれた。

1990年にはヨーロッパのゴールデンステアリングホイール賞も受賞している(写真:日産自動車)
1990年にはヨーロッパのゴールデンステアリングホイール賞も受賞している(写真:日産自動車)

この足まわりの設定については、「硬すぎると批判された」と今は書かれている。しかし、当時の私の印象では、セダンが大型化すると同時に快適志向へと向かっていく中で、「このぐらい極端に振ったモデルがあってもいいだろう」というものだった。

日産の開発陣が「プリメーラにはこの乗り味がベスト」と信じて開発しているなら(実際にそうだったろうと思うけれど)、これを受け入れればいいではないか。

自動車も開発者の“作品”であると考える私にすれば、「イヤなら乗らなければいい」と言いたかった。

イギリス向けプリメーラの足まわりの設定はどうだったんだろうか。寡聞にしてそこは知らないのだけれど、いずれにしても日産は1992年までは当初の設定を守り、そこでサスペンションに手を入れた。

クルマ好きを刺激するクルマ

ボディのディメンションは、全長4400mmでホイールベースは2550mm。このコンパクトさもよかった。車重は1トンそこそこしかないので、安全基準などで車重がどんどん増している今、初代プリメーラを操縦すると、きっと驚くほど軽快だろう。

初代プリメーラは細かい改良を繰り返しながら、1995年まで生産された(写真:日産自動車)
初代プリメーラは細かい改良を繰り返しながら、1995年まで生産された(写真:日産自動車)

昨今、ヤングタイマーなどといって、1980年代や1990年代のクルマの市場での人気が高まっているようだけれど、車体の軽さがもたらす軽快なハンドリングも、当時の車両に対する高評価の背景にあるんじゃないだろうか、と私は考えている。

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こうして書いてみると、1995年まで生産されて2代目にバトンタッチした当時のプリメーラ、「今また乗ってみたい」という気持ちがムラムラと湧き起こってきた。クルマ好きをいい意味で刺激するクルマなのだ。

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小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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