VisionPro予約で見えたアップルの"大きな賭け" 大規模投資の先に見据える「独り勝ち」の未来
メガネ使用者は、メガネを通した普段の視野に極めて近い感覚を得られるはずだが、そのためには累進レンズの複雑かつ連続して変化する視野の変化に対応した映像にしなければならない。
アップルは人間の視覚に対する医学的知見、光学技術に対する知見を基に、コンピュータ上でそれを補正するための信号処理モデルを開発し、さらには一連のフィッティングの流れをオンラインで購入者自身が行えるシステムまで開発した。
ライトシールのサイズは機械学習によって極めて高精度に選ばれるが、それでも完璧ではない場合に備え、専用アプリではフィット感をチェックできるという。万が一不満がある場合、購入後14日以内ならばオンライン、実店舗いずれでも交換できるサービスも用意している。
既存製品で開発してきた技術を凝縮
28種類ものライトシールがあることを考えれば、これをアメリカ全土の(そしていずれは世界中の)直営店舗に展開するだけでも、かなりの“高カロリー”な準備だ。それだけ「現実に近い感覚の視野」と「長時間使用した際の快適性」を重要視していることがうかがえる。
まだ市場が確立していない“空間コンピュータ”という新しいジャンルを確実に離陸させるため、できうることは何でもトライしようということだろう。
振り返ってみると、アップルはVision Proを実現するまでの間に、既存製品の枠組みの中で実に多くの開発を行ってきた。
世界トップクラスの半導体技術、AR(拡張現実)、AIのデバイス内処理、空間オーディオ技術、深度情報を持つ写真、動画を撮影するカメラ技術。いずれもVision Proを成立させるために必要不可欠な要素だ。
価格は3600ドル(日本円換算でおよそ50万円)からと、高額な設定だ。600グラム以上もあるこの製品を多くの人が使う様子を想像すると、それはSF映画のディストピア(暗黒世界)が訪れたようでもある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら