VisionPro予約で見えたアップルの"大きな賭け" 大規模投資の先に見据える「独り勝ち」の未来

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まず、そのスペックを簡単におさらいしたい。

表示品質は視野角1度当たりで50画素以上に達する。仮に30度ほどの画角に仮想ディスプレイを置くと1500画素で、文書などを読むには十分な品質だ。60度を超えれば3000画素となり、4Kテレビに近い感覚となる。

視力1.0の肉眼は、視野角1度当たり60画素程度の解像度と言われており、一般的な現代人の肉眼に近い緻密な表現が行える。

Vision Proは、Webexをはじめ主要な電子会議システムにも対応している。あらかじめ登録するデジタルペルソナ(3Dモデル化されたユーザー像)にも対応し、表情を反映した映像が送信される(画像:Cisco)

12個のカメラ、5つのセンサー、6つのマイクを専用チップで処理することにより、現実空間の視野と音の広がりをリアルタイムでとらえ、座標を持つ空間情報としてVision Proの中に取り込んでいる。それらが同じく座標を持ったコンピュータグラフィクスと合成され、使用者の新しい視覚として眼に投影されるのだ。

現実空間の再現性の高さは、他のヘッドマウントディスプレイ(HMD、ゴーグルのような装着型ディスプレイ)とは比較にならない。手元を見ても、テーブルの上にあるものを取る場合も、仮想オブジェクトを棚の上に飾るため部屋の中を歩き回った場合にも、自然に行動できた。

iPhoneカメラで頭の形状を計測

今回の予約開始に伴い、アップルはVision Proの購入者に対し、極めて複雑なフィッティングのプロセスを構築している。技術的な課題を持ちつつも、可能な限り肉眼での視野に近づけるためだ。

購入に当たっては、iPhone内蔵の「TrueDepthカメラ」(顔の形状を立体的にとらえる機能を持つカメラ)で自身の頭の形状を計測する必要がある。これにより、28種類用意されたライトシール(視覚から光を遮るVision Proと使用者の間に入る器具)から適したサイズが自動的に選ばれ、自然な装着感を実現できる。

メガネによる視力矯正をしている使用者に向けては、斜位(あるいは斜視)補正を除くほとんどの視覚補正に対応できる磁石で装着可能なレンズをZEISS社と共同開発している。単純な近視、遠視、乱視への対応だけではなく、累進度数を持つメガネの置き換えにも対応する。

この視覚補正用レンズ(Optical Insertという)を装着する使用者には、異なるサイズのライトシールが選ばれる。視野に変化が起きるためだ。

レンズパッケージに添付される2次元コードを用いて、Vision Pro本体とペアリングを行う。左右異なる補正レンズによって矯正された視野に最適化するため、OLEDディスプレイへの表示が微調整される。

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