未曾有の危機に立ち向かう再生可能エネルギーの未来《3》普及促進のカギは、発送配電の分離
先日、ブルガリアから帰国した。鮮やかなブルーグリーンに輝く黒海を望むリゾートで友人の結婚式に参加したのだが、その横では黒海の強風を受けて豪快に回る風車が何十台も並んでいた。「こんなところでも風力発電が」と思っていたところ、実は日本企業によるJI(共同実施)プロジェクト(※)によるものだという。一面の草原と海を眺めながら、どのようにしてこの国で風力発電が普及したのか、日本との違いは何かと思いをめぐらせた。
日本では電気は選べないが、海外では個人が選ぶ
欧州との違いを考える前に、日本の電力系統について説明する。電力系統とは発電・送電・配電の統合システムで、日本では10電力会社ごとに整備され、沖縄電力以外の電力会社間で接続されている。
各社が自前で大規模な発電所を造り、そこから電力消費地までの送電網を敷き、各家庭やオフィスまで配電するという垂直統合の形である。
製造業に例えると、工場での生産から物流、販売まで1社単独ですべて行い、たとえば東京の人は大阪で生産された商品は買えない、という状態である。
もちろん電力は自動車や缶コーヒーとは異なり、生活必需品であるうえに安定供給が求められる商品である。そのため日本では地域独占での供給が認められてきた。
だが、この安定供給を優先するために弊害も出始めている。たとえば日本の風力発電でポテンシャルが大きいのは北海道だが、北海道電力から東北電力に送ることのできる電力量は限られている。さらに限られた量を送ったとしても、現在の制度では東北電力の管轄地域に住む個人が北海道産の風力発電を選んで買うことはできない。