「能登地震」を元日のテレビはどう放送したか 放送を続けたのはNHK、TBS系列、読売テレビ

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民放は正月番組の中に地震報道を織り込んでいく編成だった。日本テレビは駅伝直前番組の中で地震報道に時間を割き、その後は「箱根駅伝」を中心に正月番組を編成。TBSも1日にほとんど地震報道に費やした分、2日はニュース枠で地震について伝える程度だった。

フジテレビは朝8時30分から1時間、「緊急特番」と題して地震報道をたっぷり伝えた。これはネットワーク連携もあるので後述する。

テレビ朝日も午前中の「ポツンと一軒家傑作選SP」の途中、11時45分から地震について報道し、13時まで1時間以上を割いた。その後は通常の正月番組。

テレビ東京も9時からの「温泉タオル集め旅」の中で12時45分から13時10分まで地震報道を伝えた。

以上が大都市圏である関東・関西・中京地区の地震当日と翌日の放送だ。筆者はさらに地震の直接の被害を受けた石川県、富山県、新潟県の民放ローカル局に三が日の放送内容について問い合わせたがまだ返事をもらっていない。地震の余波が続いている中、迷惑な問い合わせだったかもしれない。ただ、富山県のフジテレビ系列局、富山テレビだけは返信をもらった。

まず1日は基本的にキー局発の地震報道番組を放送し、その中で複数回ローカルとして差し替えた報道も行った。翌2日はローカル制作の報道特番を6時55分〜8時30分まで放送。先述のフジテレビ制作の8時30分からの特番と合わせて9時30分まで2時間半強の地震特番を放送した。この連携は、富山の人々にとっては地元視点と全国視点の放送が続けて見られるいい形だと思う。

これとは別にローカル局独自のL字放送(メイン画面を少し小さくして文字情報を届ける)を1日の17時24分から4日の18時59分まで送出した。また自社アプリとWEBサイトに特設ページを設け、地震関連のニュースのほか、罹災証明などの行政の窓口紹介や「サザエさん募金」の紹介なども行っている。

おそらく他の民放局もこれらに似た独自の情報発信を行ったものと思う。再度問い合わせるので各局の皆さん、落ち着いたところで返信をもらえるとありがたい。

考えさせられる「災害時の情報の伝え方」

今回の能登半島地震では災害時に情報を各メディアがどう伝えるべきか考えさせられた。放送局はNHKだけでなく民放も公共的役割を担っており、災害時には急きょ報道に切り替える義務がある。一方で、そんな時の娯楽番組には人々の心を癒やす役割もあると今回再認識した。

さらに、被災地の情報インフラの重要性も注目された。停電で中継局の電源が切れて電波が届かない地域もあった。それも含めて、石川・富山・新潟での各メディアの状況は知りたいところだ。引き続き情報収集を進めていきたい。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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