「郵便局冤罪ドラマ」でイギリスが大騒ぎなワケ 調査報道で動かなかった政府も緊急行動

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イギリス史上最悪の冤罪事件をめぐるドラマがイギリスで大きな騒ぎを起こしている。これまで報道されながらスルーされたいたのに、ドラマが注目を集めたのはなぜか(写真:Chris J. Ratcliffe/Bloomberg)

700人以上が犯してもいない罪で有罪判決を受けた。少なくとも4人が自殺し、ある女性は妊娠中に刑務所に送られた。破産もあった。結婚は破綻し、人生は滅茶苦茶に——。

イギリス史上最悪の冤罪事件の衝撃的な詳細は、長年にわたって報道されてきたが、運動家や調査報道ジャーナリストの熱心な努力にもかかわらず、どういうわけかほとんどの国民の目に留まることがなかった。

先週までは——。1月1日に放送が始まり、視聴者の心をつかんだITVのドラマシリーズ「ミスター・ベイツ対ポストオフィス(郵便局)」は、10年間にわたって政治をすり抜けてきたことを達成し、官僚や法的対応の遅さの泥沼を突き破り、政府を行動に追い込んだ。

欠陥ITシステムで何百人もの人生が破滅

同番組は、「ホライゾン」と呼ばれるITシステムの欠陥によって会計に間違った不足が生じたことから横領などで無実の罪を着せられた何百人という郵便局長らの運命をドラマ化したものだ。

1999年から2015年にかけて、実際には発生していない経済的損失を理由に彼らは法廷でポストオフィスから執拗に追及された。投獄された人もおり、ほとんどが経済的苦境に追い込まれ、多くが精神上の問題に苦しみ、自ら命を絶った人もいた。

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