「郵便局冤罪ドラマ」でイギリスが大騒ぎなワケ 調査報道で動かなかった政府も緊急行動
このようなストーリーが、3年間の苦労の成果である「ミスター・ベイツ対ポストオフィス」を駆動している。脚本を書いたヒューズ氏は、起こった出来事の真実は「信じられない」ものだったと語る。「こうしたものをフィクションとして描いたら、誰も真剣に受け止めずにスイッチを切ったに違いない」。
トビー・ジョーンズ演じる勇敢なミスター・ベイツは、落ち着いた、根気強い人物として描かれている。ミスター・ベイツはほかの被害者と同様に、ポストオフィスから「ホライゾンに問題があると報告した人間はほかに誰もいない」と告げられる。
イギリス政府と取引を続ける富士通の責任
彼はほかの被害者を見つけ、被害者グループを結成。乏しい資金で身の潔白を証明する裁判を求め、そして相次ぐ挫折と闘いながら、法廷で驚異的な勝利を収める。
被害者の大義に協力した政治家も少数ながらいる。3万6000ポンド(約660万円)を盗んだとして不当に告発された地元有権者のために闘った保守党下院議員(現在は貴族院議員)のジェームズ・アーバスノット氏は、その代表格だ。
ドラマでは、別の保守党下院議員ナディム・ザハウィ氏がゲスト出演し、議会委員会の公聴会でヴェネルズ氏に質問する役を演じている。
視聴者にとって、ヴェネルズ氏はポストオフィスの頑迷な顔、被害者に向き合うのではなくポストオフィスの評判を守る決意を固めた人物として登場する。同氏はイギリス国教会の司祭に任ぜられているため、その姿勢はなおさら驚くべきものだ(とはいえ、同氏は2021年に教会での主要な役職から退いている)。
ホライゾンのシステムを開発した日本企業、富士通に対する圧力も強まっている。政治家たちは、イギリス政府といまだに何十億ポンドという契約を結んでいる富士通から被害者補償費用の一部を回収することを望んでいる。
(執筆:Stephen Castle記者)
(C)2024 The New York Times
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