「郵便局冤罪ドラマ」でイギリスが大騒ぎなワケ 調査報道で動かなかった政府も緊急行動

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スペンス氏は、ドラマシリーズの放送が始まった翌日に第1話を350万人以上が視聴したと同僚から聞かされ、「聞き間違いかと思った」と話した。ITVによると、これまでに約900万人がこのシリーズを視聴している。

このスキャンダルに関する公式調査は2020年に開始され、補償プログラムからすでに1億4800万ポンド(270億円以上)が被害者に分配されている。2019年には、555人の郵便局長が高等法院でポストオフィスに対する異議申し立てに成功した。

それにもかかわらず、700件の有罪判決のうち、これまでに覆されたのはわずか93件にすぎず、そのペースの遅さに運動家たちは怒りを募らせてきた。

濡れ衣の被害者たちがなめた辛酸

ITVのドラマが放映されて以来、さらに多くの被害者が名乗り出るようになっているが、何十人という被害者が補償金を受け取る前に亡くなっている。ホライゾンによって局の会計が赤字とされた場合、局長には契約上、不足額を補填する義務があった。

自分に落ち度はないという確信があったとしても、訴追を避けるために自身の貯蓄から不足額を補填した人もいた。無実であるにもかかわらず、収監を避けるために軽微な罪で有罪を認めた人もいた。

ドラマで苦境が取り上げられた被害者の1人、リー・カッスルトン氏はBBCに対し、ホライゾンの経理は黒字から赤字へと唐突に変動し、ヘルプデスクに90回以上電話をかけても無駄だったと話した。ポストオフィスは「絶対、断固として」同氏を助けなかったという。

犯してもいない悪事のニュースが地域社会に広まり、カッスルトン氏とその家族は横領の犯罪者だと街頭で責められた。娘は、学校でいじめられ、摂食障害になった。仕事を求めて遠方に行くことを余儀なくされたカッスルトン氏は車中で寝泊まりした。

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