意外と知らない「推し」と「萌え」決定的な違い 情報革命でファンの在り方は大きく変わった
Facebookも似たり寄ったりです。SNSはユーザー個人が他人に注目されたい、認められたい、評価されたいという願望をかなえるもので、「いいね」されたい、フォロワーを増やしてたくさんの人に観てもらいたいものでした。
「いいね」が欲しいという気持ちは、いわゆる承認欲求を充たしたいという気持ちです。SNSは、私たちの持っている承認欲求を可視化し、SNSを始めたばかりの人々は「いいね」が欲しい気持ちのままにTwitterやインスタグラムのアカウントを運営しました。
「インスタ映え」が流行語大賞になったのは2017年のことです。自撮り棒が最新の流行だった頃、誰もが表現者になれると思えた時代、なるべきだと思い込んでいた時代は確かにあったのです。
また、誰かや、何かを好きだと表現する言葉も、「推し」ではありませんでした。SNSが登場する直前の2005年には「萌え」という言葉がユーキャンの流行語大賞に選ばれました。
誰かや何かを好きだという点では「推し」と「萌え」には共通点があり、たとえば2007年に登場した初代ボカロである初音ミクを「推す」のでなく、初音ミクに「萌える」のも、初音ミクが好きという意味には違いありませんでした。
「推し」と「萌え」には大きな違いがあった
「推し」と「萌え」には大きな違いもありました。もともと「萌え」は、アニメやゲームの女性キャラクターが好きな男性オタクとその周辺で流行った言葉でしたが、「萌え」には自分がその女性キャラクターを好きなだけでなく、その女性キャラクターに好かれたい願望が含まれがちで、そうでなくても自分とキャラクターが一対一の関係として想定されていました。
「推し」と違って、他人にすすめる・大勢で1人のキャラクターを応援する、そういった意味合いが「萌え」には希薄だったのです。そういえば、同時代の男性オタクたちが愛好した「セカイ系」という物語形式も、主人公とヒロインの2人だけの物語を軸に、それにあわせて世界の命運が変わったり世界全体が物語られたりするものでした。
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