今ではケニア、ルワンダ、セネガル、コートジボワールなど、さまざまな国で子どもたちに数学や理科を教える機会を、仕事として提供している。
奨学金がなかったら、肉体的か精神的に潰れていた
やはり、幼少期に自らも貧しい生活を送ったことから、同じ境遇の子どもたちを「助けたい」という気持ちがあったのだろうか?
「それはあると思います。初めて青年海外協力隊で訪れた国は、電気も水もないような場所にもかかわらず、勉強をしたい子どもたちはたくさんいました。あるとき、日本からチョコレートが送られてきたんですよ。
彼らはチョコレートを食べたことがないので『家で勉強すると約束してくれるならあげるよ』と言って渡したところ、ちょっとだけ食べて銀紙に残すんです。『なんでや?』と聞いたら、『家に持って帰って弟や妹にも分けてあげるんだ』と言うんです……。
それを聞いた瞬間、彼らが僕と全然違うタイプの人たちで、この子たちとずっと仕事ができたら、違う人生の扉が開くのではないかと思いました。
そのような、貧しいけど、やる気のある子どもたちの力になれる仕事で一生飯が食えたら、それは楽しい人生になるだろうなと感じたんです」
現在、発展途上国で子どもたちのために、汗水垂らして働く長内さん。この仕事は奨学金を借りて大学院まで進んでいなければ、できなかったことだろう。ただ、奨学金制度そのものには、一家言ある。
「きょうだいや僕の妻たちは、奨学金のことを『借金』と言ってきますが、僕にとっては『投資』です。これがなければ、僕はみんなと同じレベルまで到達することができませんでした。でも、今の奨学金制度そのものは『部分肯定派』です。奨学金がなかったら、青年期に僕は肉体的か精神的に潰れていたと思います。だからといって、借りるからには返済のメドが立ってなくてはなりません。自分にとって、進学が本当に必要か考えるべきだと思います」
飄々とした口調ながら、自ら苦しみもがきながら、生きる道を模索し、現在は他者の教育のために一生を捧げると決めた、彼の意見はグッと胸に突き刺さる。
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