台湾、3期目を迎える民進党政権が抱える苦悩 若い世代の忌避感が生んだ「ねじれ議会」
若い世代では不動産価格の高騰や物価高に対応しきれていない低賃金など経済問題であえぐ声が大きい。民進党と国民党の2大政党はこれらの問題に対応することができず、中国との関係などイデオロギー争いに終始しているとの不満がある。
2016年に蔡英文政権が誕生した際には、国民党の急激な対中接近に危機感を募らせた若者世代が民進党政権の誕生を後押しした。しかし、当時の若者はすでに30歳前後となり、今の20代では民進党も国民党と同様の既得権益をもつ政党とみなされるようになった。
もともと台湾市民は過去に国民党の権威主義体制下にあった経験から、特定の政治勢力が長期間にわたり権力を握るのを忌避する傾向がある。その流れに若い世代の既存2大政党嫌いが加わり、柯氏の支持が想定以上に広がったとみられる。
中国の影響力行使の効果はほぼなかった
世界的には中国との関係が主要争点と思われた今回の選挙だが、若い世代が経済や内政問題に厳しい目を向けていたように台湾国内では必ずしも最大の争点にはならなかった。
確かに選挙期間中には中国からの軍事的な圧力は継続したほか、親中とされる国民党の馬英九前総統が野党候補一本化に向けて仲介役を果たそうとした。ただ、中国の影響力行使や台湾経済に詳しいアジア経済研究所の川上桃子・主任調査研究員は「一連の(中国による)影響力行使は、結果的にほとんど影響を及ぼさなかった」と指摘する。
川上氏は「『中国との関係』は台湾の総統選挙の底流にある最重要争点であり、選挙戦の構図をかたちづくる構造的要因」としつつも、「選挙結果をみると、中国の影響を受けた有権者は多くなかった」と分析する。「蔡英文政権への軍事的、経済的ゆさぶりを経て、その効果が(選挙中には)低減した」(川上氏)とみられる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら