台湾、3期目を迎える民進党政権が抱える苦悩 若い世代の忌避感が生んだ「ねじれ議会」

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結果的に民進党政権が継続することを許してしまった中国が、今後さらにゆさぶりをかける可能性もある。

すでに選挙期間中、中国は中台間の経済協定にある関税引き下げ措置を一部品目で停止したり、台湾側の中国製品の輸入制限措置が「貿易障壁」にあたると認定したりするなど経済面で影響も出ている。

川上氏は、選挙のゆさぶりだけでなく、中国側は「長年、台湾に対して一方的に利益供与をしてきたのに奏功していない」といらだっているとみる。「中国は優遇措置の取り消し等の措置を今後も断続的に行い、新政権への圧力をかけるだろう」(川上氏)。

ただ、その効果について川上氏は経済全体では限定的なものだとして、「中国の台湾に対する制裁行動は台湾経済の対中依存度を下げる方向につながる。中国は台湾との経済融合をめざしているが、その手段として制裁措置を課すことで台湾がさらに中国から離れることになる、というジレンマを抱える」とみる。

国政でねじれ発生により、政策は停滞か

中国の圧力が続くと見られる中で、民進党の新政権は議会とのねじれ関係で苦しむことになりそうだ。過去8年間は民進党が立法院でも単独過半数をもっていた。選挙での当選確実が明らかになった後、蔡英文総統は立法院で過半数割れしたことを念頭に「より多くの声に耳を傾けなければならない」と話した。

民進党は過去にも国政のねじれで苦しんだ経験がある。2000~2008年、民進党の陳水扁政権期には、議会で国民党など野党陣営が多数派だったために、予算案や重要法案が立法院で通過しなかった事例もあった。蔡政権が進めてきた対中抑止のための国防強化政策などで支障が出てくる可能性がある。

民進党は政権が継続できた理由である外交・国防政策を盤石にするためにも、国内の広い声をすくい上げる努力をする必要がある。頼清徳氏は勝利演説で「民進党に投票しなかった人たちの声も聞いた」と語った。

新たな議会をうまく運営できるのか。それができなければ、支持された外交・国防政策でも信頼を失いかねない重責が新政権にのしかかっている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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