仏、歴代最年少「34歳新首相」が誕生した納得の理由 政界入り10年でスピード出世したエリートの実像
フランスのエリート主義は、欧州連合(EU)の中でも有名だ。たいていは国立行政学院(現国立公務学院)やパリ政治学院卒で、最初から高いポジションが与えられる。理性主義のフランスは頭脳明晰さが第一に苦慮されると同時に、弁舌能力も重視され、アタル氏はその両方を備えている。39歳で国会議員の経験もない金融界で出世したマクロン氏が大統領になれた背景も同じだ。
フランス以外でも、2019年に44歳で欧州連合(EU)大統領に就任したミシェル氏(ベルギー出身)、2022年に42歳でイギリスの首相となったスナク氏など、若いリーダーが登場している。
欧州には現在、仕事上のリーダーを地位とする考え方は薄く、能力があれば若くてもかまわないという考えが浸透している。特に激変する世界情勢の中、変化を感じ取り、迅速に行動に移すのは若い世代のほうが適しているという考えだ。
アタル氏の信念の1つが「反国家主義」
モチベーションの高さ、政治的野心も重視される。アタル氏は上昇志向が非常に強いだけでなく、さまざまな場面で信念を貫こうとしてきた。
その信念の1つが2002年に両親に連れられて参加した極右のRNに対する反対集会がきっかけとなった反国家主義だ。マクロン政権は議会で躍進したRNとさまざまな改革で対立し、昨年秋以降の移民法改正でも大きく譲歩させられている。マクロン氏が反RNの急先鋒であるアタル氏を首相にした動機も見えてくる。
ボルヌ前首相は、厳しい改革を断行するため、国会審議を省略して法案を可決できる憲法49条3項を多発し、「マダム49.3」と呼ばれたが、アタル氏が同じ手法を使うことも懸念されている。
マクロン氏が率いる与党・ルネッサンス党は2022年の下院選で過半数割れにより弱体化しており、決められない政治に失望する若者からの政治信頼回復が急務だ。今年は欧州議会選も控え、さらには今夏、パリ五輪・パラリンピックも開催される。
フランスの経済紙、レ・ゼコーの調査では36%がアタル氏の首相就任をポジティブに受け止めているとされるが、アメリカの大統領選も行われる今年、アタル氏の政治力が問われている。
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