仏、歴代最年少「34歳新首相」が誕生した納得の理由 政界入り10年でスピード出世したエリートの実像

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アタル氏は1989年3月、パリ郊外クラマールでユダヤ人家庭出身の弁護士・映画プロデューサーの父(ユダヤ教信仰はない)、ロシア正教徒でロシア貴族の血を引く母のもと、裕福な家庭に育った。

社会党出身のアタル氏は政治家や官僚の登竜門と言われるパリ政治学院卒のエリートで、24歳で保健省の名もない政務官から出発した。転機となったのは社会党を去り、マクロン氏が経済相時代の2016年に中道政党LREM創設時のスタッフになったことだった。もともと社会党内でも自由主義経済を否定しなかったアタル氏は、金融界出身のマクロン氏を支持し、2017年の大統領選勝利に貢献した1人だった。

政治的センスと弁論能力で、一気に頭角を現す

大統領になったマクロン氏は、共和党や社会党といった既存大政党を崩壊に追い込み、LREMが下院の過半数を占める圧勝で、政治地図は大きく変わった。LREMの中心的存在となったアタル氏は、仏日刊紙ル・モンドによれば、「彼の政治的センスと弁論能力により」一気に頭角を現し、2020年7月からカステックス内閣の政府報道官に選ばれた。

連日、メディアに登場する政府報道官という立場が与えられたことで、認知度は一気に高まっただけでなく、1年生議員の多いLREMの中で頭角を現し、ル・モンド紙が指摘するように優れた弁論能力で、メディアに対して、そつのない適切な受け答えを繰り返し、傲慢と批判されるマクロン氏の2022年の再選に貢献したと言われている。

改革者を自任するマクロン氏が労働法を改正した後のフランス国鉄(SNCF)改革など厳しい抵抗に遭う改革を断行する中、政府の説明責任を果たすのに報道官の役割は大きかった。メディアに対して感情をむき出しにすることなく、その風貌からアイドル的存在となり、さまざまなテレビ番組に呼ばれ、好感を持たれた。

2023年7月、教育行政で経験のあるアタル氏は国民教育相に任命された。学校のいじめ対策で加害者に対する厳罰化、いじめ回避の教育プログラムの導入で手腕を発揮してきた。彼自身、高校時代、同性愛差別から厳しいいじめを長期にわたって経験した過去があり、今回の首相就任演説でも「いじめは国家の最優先事項として取り組む」と宣言している。

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