幸楽苑と日高屋、なぜ明暗が分かれたのか

「290円ラーメン中止」の本質

飲食業界には「FLコスト」と呼ばれる比率が存在する。材料費と人件費の合計を売上高で割って算出する比率だ。FはFoodの略で材料費、Lはlaborで人件費を示す。このFL比率が60%を上回ると、経営が厳しいといわれる。飲食業では人件費と材料費が原価の大半となる。

FL比率= 「(材料費+人件費)÷売上高」

人件費の削減を考えてみよう。幸楽苑の場合、地方立地店舗がハイデイ日高と比較して多いことから、比較的低賃金で従業員を雇用できるはずだ。ただ、今の日本の雇用環境は過去20年の最高水準に改善してきており、各産業で人手不足が叫ばれている。この局面では人件費を大きく下げるのは難しい。1店舗当たりのオペレーション(各種業務)を今よりも少人数で回せるような仕組みがあればいいが、メニューが豊富な幸楽苑で現場の人員を今よりも極端に減らすのも現実的ではない。

材料の質は落とせない

材料費はどうか。そもそも食材費の高騰が290円の中華そばで利益を出せなくなった要因にあるうえ、材料の質を落とすようなコストカットにも踏み切れない。首都圏で複数店舗を経営するラーメン屋の経営者は、「材料の品質を落とせば確かに利益が上がるものの、その分、味も落ちていずれお客の信頼もなくなってしまう」と話す。材料費を劇的に削るのも、難題といえる。

となれば、幸楽苑が業績改善で取るべき道は売上高の拡大しかない。既存店でみれば客単価向上を狙うことだ。とはいえ、幸楽苑が収益性の高い「ちょい飲み層」を取り込めるかというと、それも容易ではない。地方に展開し、車での来店を前提とする幸楽苑の店舗は運転者にアルコールを提供できないからだ。ファミリー層を狙うなど、ハイデイ日高とは別の戦略が必要となる。

これにもハードルが待ち受ける。今のところ、幸楽苑にとって目立って客単価を上げられる策は、520円の「醤油らーめん『司』」の投入ぐらい。極旨醤油らーめん、味噌らーめん、塩らーめんなどは税抜き390円で据え置かれている。チャーハンやギョーザのセット販売の比率を高めたいという方針はあるようだが、確実な成果が狙えるかというと微妙だ。

つまり、看板商品の290円ラーメンを中止しても、幸楽苑とハイデイ日高の収益力の差は容易には詰まらない。「店舗の立地」と「メニュー構成」という外食チェーンの「基本」ともいえる戦略の違いが、時間とともに大きな差となって現われてきている。

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